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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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居候師匠-1

何度かの受け太刀で琴音は躓き、地面に倒れた。
それを前後から斬りこもうとした2人の動きが止まった。
「あがっ」「うっ」
石礫が飛んで来て彼らの頭部に当たったのだ。
その隙に立ち上がろうとする琴音に別の3人が斬りかかろうとする。
そのときその3人と琴音の間に人影が横切った。まるで流れる水か吹き抜ける風のように剣が閃いたかと思うと、3人は刀を手元から落とした。
「腕の筋を斬った。刀は当分持てまい」
そう言ったのは佐野無角翁その人だった。
そのとき出遅れた1人が無角に向かって斬りかかった。
体を開いてその一撃を避けると首筋に手刀を入れて倒した。
「何者だ?」
礫を受けて額から血を流した侍が怒声を浴びせた。
「それはこっちが聞きたいのう。多勢に無勢を見過ごせず、助太刀に参じた酔狂者よ」
「おのれ!」「でやぁぁ」
2人の侍が同時に無角に斬りかかったが、鋭い金属音と共に刀を弾き飛ばされた。
次に鈍い音がして2人の侍が倒れた。
「峰撃ちじゃ。尤も腕の骨が折れたやもしれんが」
後から追いついた2人の侍は既に戦意を失っていた。
「まだやるのなら、命のやり取りになるが……」
無角は剣先を空に向けて高々と上げて見せた。
「退け、退けぇぇ!」
男達は互いに庇いながら引き上げて行った。
「お怪我はないかな。お若い方」
無角は地面に腰を下ろしていた琴音に近づいて助け起こそうとした。
手を差し伸べる無角に顔を背けた琴音は相手を見ずに言った。
「き……貴殿は無力な老人と思ったが、先ほどは私をからかったのか」
「すまん。ついそなたの技量を見るために試してしまった。わしの悪い癖でな。許せ」
「その後、行く方向が逆の筈なのに、つけて来たのは何故だ」
「編み笠を取ったとき、そなたが美しい女人だと知り、ついつい関心を持ってしまったのだ。どうせ行く先は決まってなかったから、歩く方向を変えてみたまでのこと」
琴音は無角の方を見て眉尻をあげて睨みすえた。
「ぶ……無礼な。私を劣情の目で見て後をつけたというのか」
「町民たちも花が咲けば花見に集まるではないか。別に枝を折る積りはない。
ただ花を見るのが楽しいだけのこと。
ところで、わしはそなたが斬られそうになるところを助けた気がしたのだが、何も礼を言われていない」
琴音はむっとして顔を背けたが、怒気を含む声で言った。
「そ……それはかたじけない。だが、こちらも助太刀を頼んだ訳ではない。もし、助けた報酬を私に求めるのなら金子だけにして頂きたい。こちらも礼は尽くしたいが、それ以上のことは……」
そう言うと琴音は開きかかった襟元を閉めて直した。
無角は琴音の言わんとすることを悟り、少しからかうことにした。
「もし、女人のそなたがあのとき斬られていたなら、追いはぎかゴロツキに襲われたように見せかける為、衣服を剥いで骸に辱めを受けていたことだろう」
「な……なんと。たとえ恩人と言えども暴言は許さぬ」
「いやいや、頼まれた訳ではないが、綺麗な花が無残に踏みにじられるのが見過ごせなくて手を出した次第じゃ。
何故善意に受け取らないのじゃ。
ところでそなた、自分で立てるかな? 先ほど転んだ時、足を挫いたように見えたが」
「なんのこれしき……あいたた」
立ち上がろうとしてよろめく琴音を無角は支えると言った。
「こんな場所では籠屋も通らぬ。刀を杖にして歩いてもそなたが家に着くまでには、右足首は2倍に脹れあがり、数日は歩けぬことになる」
「構わぬ。手出しは無用に願う。そうだ。貴殿の名を聞こう。住まいも伺っておく。後で人をやって礼を届けたい故」
「その前にそなたを家まで届けねばならんな。さあ、3つのうち1つを選んでもらおう。俵のように肩に担ぐか、横抱きにして運ぶか、それとも背に負ぶって行くか?」
「な……何を言ってるのか意味が分からぬ」
すると無角は自分とほぼ同じ体格の琴音をひょいと肩に担いで走り出した。袴姿の尻を上にうつ伏せのまま体を2つに折って運ばれる形だ。
「やめよ! よせ、よすのだ!」
「ではこれか?」
無角は器用に肩から琴音を移動させて膝裏と背中に腕を通して横抱きにした。
「わしの首に手をかけてくれれば運びやすいが」
琴音は顔のすぐ傍に無角の顔があったため顔を赤くして首を振った。
「どこまで私を辱めるのだ。これでは赤子ではないか」
「だが歩けば足首が脹れる。では負ぶるとしよう」
「いや……それももし人に見られたら」
2人は最初に琴音が襲われたところまで来ていた。無角は落ちていた編み笠を拾って琴音に被せた。
「これならもし見られてもそなただとはわからないだろう」
そう言うと立たせた琴音の前に体を滑り込ませ、両手を持ってひょいと背に乗せた。
「い……いや、これは」
「もう選択の余地はない。しっかり肩に掴まるのだ。さあ、家はどっちの方向じゃ」
そう言いながら琴音の腿を掴んで背中に引き寄せた。琴音の編み笠が無角の頭の上にも少し被さりその分顔が近づいた。
 


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