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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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真昼の闇討ち-1

佐野無角(さのむかく)翁は2本差しではあるが、髷は結わず白髪の混じった総髪。足袋を履かずに汚れた足に草履をひっかけ歩いていた。
ちょうど昨夜知り合いの家に押しかけて夕餉を貰いついでに一泊して朝餉まで頂いて出て来たところだった。
すると向こうから編み笠を被った武士が歩いて来る。ちょうど背格好も自分と同じくらいの小兵である。
違う所は身なりもきちんとしていて刀の鞘もピカピカに磨いてある。
赤い飾り紐が洒落ていて、若い侍とわかる。
無角はちょいと悪戯心が湧いた。手にしていたのは空の瓢箪だ。
無角は石に躓いた振りをしてよろめくと手に持っていた瓢箪を宙に投げ出した。
瓢箪は若い武士の編み笠にぶつかりそうになる。咄嗟に相手は編み笠を手にして飛んで来た瓢箪を払った。
「す……すまん、つい足下が……」
無角は編み笠を脱いだ武士の顔を見て驚いた。武士の格好をしているがまだうら若い女性なのだ。
それが過日鎌田家で浅岡啓次郎を敗った多田琴音だとは無角も知らない。
琴音は落ちていた瓢箪を拾うと歩み寄り地べたに座り込んでいる無角に手渡した。
「足下に気をつけられよ、ご老人」
「かたじけない」
無角は年甲斐もなく、琴音の涼やかな美貌に惚れた。
だから、彼女が立ち去った後、その正体を確かめたく離れて後を付いて行くことにした。今で言えばストーカーである。しかもロリコンの不良老人である。
この頃の琴音は17才前後と思われる。そして無角は50代後半と考えられる。
そのときよたよた歩く無角を追い抜いて走って行く一団があった。
数にして8人。全員無角よりも体格の良い血気盛んな若い武士たちだ。
彼らは編み笠を被った琴音に追いつくと剣を抜いて取り囲んだ。
この場所は人通りもなく襲撃に格好の場所に違いない。
きりりと眉尻をあげて琴音は男達の顔を見回した。
「何者だ。私を多田監物の娘琴音と知っての狼藉か」
「桜庭道場の者だ。おぬしの命を頂戴する」
「浅岡殿に頼まれたのか? 私に試合で負けたことを口封じするためか」
「言うな! 女子の分際で男を負かしてさぞ気持ちが良いことだろう。それだけでなく我らが桜庭道場の名を地に貶めた。その天狗の鼻をへし折って、あの世でゆっくり後悔させてやる」
「その理屈には納得が行かないが、剣には剣で応えねばなるまい」
琴音はすらりと抜き放った剣を中段あたりで剣先を左斜め前方に柄を右に構えた。
更に琴音の体は深く沈み始めた。
一瞬、時の流れが止まったと思われる間合いがあった。正面左右の侍が中段から大上段に刀を振りかぶろうとしたとき、琴音は正面右側の侍の片脛を切り、返す刀で正面左側の侍の片脛を切った。
そして体を回転させて背後から切りつけて来た侍の袈裟懸けの攻撃を受け太刀した。
「キィィーン!」
琴音は少し体勢を崩しながらも右方向に飛んでから元来た道へ走り出した。
囲んでいた輪が崩れ、侍達が横走りになって追いかけて来る。だが最初に脛を切られた2人は脚を引きずって遅れて来る。
「キィーン」「ピィーン」追いかけながらも斬りたてて来る刀を受け太刀しながら琴音は次第に劣勢になって来る。
何度かの受け太刀で琴音は躓き、地面に倒れた。



 


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