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人狼少女は本能のまま恋をする 
【ファンタジー 官能小説】

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選択の権利-5


 ……具体的に、何をどういう風に頑張ったか、きっと聞いてはいけない部分なのだろうと、アンは内心で頷く。
 一方でチェスターは、相当に抱えていた鬱憤が辛かったらしく、不満げに口を尖らせた。

「あー、まったく。恋は盲目って、心底思い知ったよ。恥ずかしがってるだけなんて気づかなかった。 
 こうなったらもう、アンが我慢できなくなって自分から強請ってくるまで、徹底的に身体から堕としてやろうってまで思いつめてたのに……ちょ! 怒らないって約束しただろ!?」

 思いっきり睨みつけるアンに、チェスターが必死で両手を振る。

「ば、ばかみたい!!」

 そういえば、チェスターのごく小さな頃を知っているサーフィおばさんが、『チェスター坊ちゃんも、恋愛には少々不器用でしたわねぇ』と、なにかの折りにぽろっと言っていたような気もする。

 愛嬌の塊のようで、妙齢の女性にも知り合いが多いチェスターが、まさかと思っていたけれど、どうやら本当だったようだ。
 アンは溜め息をついて、ひざ立ちのチェスターに抱きつく。

 アンだって悪かったのだ。
 なんのための、人と狼の二つ姿だろう!
 せっかく言葉が通じるのに、ちゃんと言わないし聞かなければ、何の意味も持たない。

「チェスター、大好き。ちゃんと最後まで……抱いてほしいの」

 耳朶まで真っ赤になるのを感じたけれど、震える声で告げる。恐る恐るチェスターを見ると、顔を真っ赤にしてアンを凝視していた。

「う、わ……すごい殺し文句……な、お願い。もう一回、言って!」

 とんでもない要求に、唖然とする。

「絶対イヤ! 死にそうなくらい恥ずかしかったんだから」

 首を振って、急いで身体を離そうとしたけれど、首筋をスルンとなぞられる。

「っ!?」

 途端に、細いながらも痺れるような快楽が腰まで走り、膝が折れそうになった。
 チェスターがニヤニヤと悪い笑みを浮べている。

「じゃあ、これからたっぷり責めて言わせる。俺ばっかり堕とされるのは、やっぱり悔しい」

「え!? ちょ……」

「おーい、ジュード!」

 チェスターが入り口の布から半身を突き出し、仲間の一人を呼んだ。藍色の髪をした三白眼の青年が、肉を挟んだパンを片手に近づいてくる。
 ジュードは隊商では珍しい魔法使いの青年だ。
 もっとも本格的に学んだことはなく、バーグレイ商会に加わる前は、下町で浮浪児暮らしをしていて、盗んだ魔法書で独学したそうだ。

「悪いけど、ちょっと馬車に防音魔法をかけてくれ」

 チェスターが頼むと、理由に感づいたらしい魔法使いの青年は、盛大にニヤついた。

「はいよ」

 独学といえジュードの腕前はなかなかで、ニヤケつつも呪文を唱えると、あっというまに薄緑の光が幌馬車を包む。

「ちょっと! あんなことしたら、聞こえなくたって、余計に……」

 赤面したアンの文句は、唇を塞がれて中断させられた。

「ん、んん……」

 柔らかく唇の表面を合わせたのさえ、考えれば今日が初めてだ。

「こっちも……したことなかったの?」

 つい尋ねてしまうと、チェスターがニヤリと笑って頷く。

「まぁね。俺はなかなか一途だから」

 ……あれだけ色々とやっておいて、はたして一途といえるのか少々怪しいと思うが、チェスターなりの線引きなのだろう。

 深く考える間もなく、衣服の上からわき腹を軽く掴まれた。

「んっ!」

 また、快楽の痺れがそこから走る。こんな僅かな刺激でどうしてかと思うほどだ。
 寝具はまだ敷いていなかったから、チェスターは手近なクッションをいくつか引き寄せてアンを押し倒し、ペロリと唇の表面を舐めた。

「今日は手加減なしでメチャクチャにするから、良い声でいっぱい鳴いてよ」

 アンを捕らえる焦げ茶色の眼は、どんな獰猛な獣をも仕留める、狩人の色だった。




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