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人狼少女は本能のまま恋をする 
【ファンタジー 官能小説】

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夜の困惑-2

***

「――ん、ふ……っ……ぅ……」

 差し込まれた指が、ぬかるんだ場所を緩くかき回す。
 馬車の寝床に横たわったアンは、硬く目を閉じて交差した両腕で顔を覆ったまま、押し殺しきれない喘ぎを漏らした。
 最初こそ、たった指一本にもかなりの違和感があったのに、何度もされた今ではすっかり慣れ、ぬめる液体を足されなくてもすんなりとチェスターの指を受け入れるようになっていた。
 それどころか、緩い愛撫を執拗に繰り返されると、そこが疼いてたまらなくなり、もっとと強請るように絡み付き、ひくついてしまう。

「ぅ……ぅ……」

 食いしばった歯の隙間から、熱い吐息が零れる。
 こうしている間、彼は今夜も一言も口を聞かない。とても優しく丁寧に蕩かしながら、ひたすらアンを追い詰めていく。

「ひっ!」

 パクリと耳朶を咥えられ、不意打ちに喉が鳴る。体内の指を軽く曲げられ、背筋を駆け上る刺激に、身体が弓なりに反る。
 昇りつめた身体をぐったりと敷布に落とし、荒い呼吸を繰り返した。
 ほんの少し休息が与えられ、快楽の余韻が消えないうちに、また手が内腿を滑り始める。
 今度はもう一段強い絶頂が与えられ。それを何度も繰り返され、すっかり溺れていく。

 とても手馴れているらしいと、いくら経験不足のアンでも察することができた。
 チェスターはかなり年上だし、あれだけ女性の知り合いが多ければ、経験もそれなりに豊富だろう。
 文句を言うつもりも権利もないのだが、チリチリと少し胸が痛いような気がした。
 そして目を開けて、チェスターがどんな顔で自分を見ているのか、もっと怖くなってしまった。

(だって、どうして最後まで……)

 いつも記憶が曖昧になるほど、散々な快楽浸けにされるが、自分はまだきっと処女なのだ。
 眼を瞑っていても、チェスターはいつもアンだけ脱がせて、自分は衣服を乱さないくらいわかる。
 昂っている証拠に、布越しに熱いものが時折太ももやわき腹に触れるけれど、突き入れはしない。
 体中にキスをするけれど、唇には触れない。

 肌に吹き付けられる息遣いはどこか冷静で、男に愛されて抱かれる女というより、狩人に追い詰められる獲物になったような気分になる。
 昼のように、ちゃんとアンを妻として公言するし、こうして同じ寝床に入って愛撫されるけれど、なぜきちんと最後まで抱いてくれないのか、どうしてもわからない。

 うじうじ悩んでいないで、チェスターに一言聞けばそれで済むことだ。
 もし同じ相談を持ちかける相手がいたら、絶対に自分はそう答えるだろう。
 それでも、この腕を退けて瞳を開け、抱かない理由を聞くのを、どうしてもためらってしまうのだ。
 そんなことはないと思いながら、もしかして……と、囁く不安がある。
 チェスターにとって、自分はいまだに妹同然で、ちゃんと抱く気にはなれないと言われたら……はっきり言葉に出さずとも、表情の端にでもそれが見えてしまったらと思うと、不安でたまらなくなる。

「あっ!」

 何度も達して敏感になった乳首を舐められ、思わず甲高い声をあげてしまった。幌馬車は防音には優れていないというのに。
 チェスターが小さく笑う気配がし、片手で柔らかく口元を押さえられる。
 胸先を口に含まれて愛撫されながら、蕩けきった箇所もまた弄られる。突っ張った内腿がブルブル震え、閉じた瞼の奥で何度目かの光が弾けた。

「―――っ!!」

 一方的に甘やかされるだけの愛撫に、今夜もまた溺れさせられた。



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