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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-21

他人が自分のテリトリーに入ってくるのが嫌な朴念仁。


それがずっとあたしが抱いていた彼の印象。


でも、実は優しくて、おおらかで、ユーモアがあって、顔に似合わずお化けや怖い話が苦手で、子供じみたイタズラが好きで、涙もろくて、照れ屋で。


きっとこれからも彼の知らない一面をどんどん発見していけるのは、あたしの特権なんだろうと思うと顔はますます締まりなく弛んでしまう。


「何ニヤニヤしてんの」


洗面所から戻ってきた久留米さんは、気持ち悪いものを見るような顔をこちらに向けつつ、あたしの向かいに腰をおろした。


「いーや、別に」


ニシシと笑うあたしをよそに、彼は焼き肉弁当とカルボナーラを取り出すとあたしにカルボナーラを寄越した。


もちろん、あたしの好みを知った上でのセレクションである。


「気持ちわりいな、さっさと食うぞ」


怪訝そうな顔で、そう言って箸をパチンと割った久留米さんとは対照的なあたしのニヤケ顔。


あー、もう黙ってなんかいらんない。


ウズウズを抑えきれなかったあたしは、とうとうニヤケ顔のまま口を開いた。


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