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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-20

その写真を見ながら、自然と独り言が出てきた。


「ホント、あたしの気持ちがわかってないんだから」


だらしなく緩んだ顔でその写真に微笑みかける。


写真を撮るときは、どうしても可愛く写りたいのが女心。


でもこの写真のあたしは、作られたよそ行きの顔じゃなく、あるがままのあたし。


キメ顔の写真の方が自分の中では納得いくけど、こんなにも無邪気に笑う自分の顔は、キライじゃない。


あたしはにやけた顔のまま、その写真を再びホラー写真の下に重ねた。




   ◇   ◇   ◇



ガチャリとドアが開いた音と共に、差すような冷気が部屋の中に流れ込んできた。



「ただいま、コンビニで適当に飯買ってきたからちょっと休憩しようぜ」


何も知らない久留米さんは、あたしの前にお弁当が入ったレジ袋をドカッと置いてから、洗面所に手を洗いに行った。


勢いよく流れる水道の音を聞きながら、レジ袋の中身を見ればあたしの好きなからあげくんレッドもちゃんと入っていたし、別梱包の白いレジ袋にはあたしがいつも飲んでいるジャスミンティーもちゃんと入っている。


こんな小さな気遣いすらも、さっきの写真のことを思い出せば愛しさは二割増になる。


普段はあたしを怒らせてばかりの久留米さんだけど、本音が垣間見えた気がして、また好きが一つ増えていった。





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