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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-22

「久留米さん」


「あ?」


「2枚目の写真飾ってくれたらあたしが喜ぶのに、ホント女心わかってないね」


あたしがニヤニヤしながら彼を見つめると、久留米さんは“何言ってんだコイツ”とでも言いたげな顔をしていたけれど、すぐにその意味を理解したのか、みるみるうちにその顔は、リトマス試験紙が色を変えるように赤くなっていった。


「玲香、お前……」


「お気に入りの写真、コソコソ隠してたって飾らなきゃ意味ないじゃん」


形勢逆転したあたしに、焦る顔の久留米さん。


今さらどう取り繕ったって、ホラー写真の下にもう一枚写真を隠していた事実は消せるわけがない。


さあ、どう出る?


久留米さんの言い訳を楽しみに待っていたけど、彼は何も言わずにくるりとあたしに背を向けてしまった。


その丸くなった背中に、勝利を確信したあたしはニマアッとさらに悪そうな笑みを浮かべる。


と同時に、真っ赤な耳と居心地悪そうに丸まった大きな背中に、たまらなくいとおしさが込み上げて来て、あたしはそっとそれに腕を回した。


「久留米さん」


「……んだよ」


不機嫌そうな声色が、ますますあたしの心を疼かせる。


「……ホント女心わかってなくて、わざとあたしを怒らせることしてばっかだけど、ちゃんと久留米さんの気持ち、伝わってきたから」


「…………」


「大好き、久留米さん」


あたしがそう言うと、彼の身体にまわした腕に、そっと大きな手が重なった。


ほんのり温かい彼の手はあたしの手をギュッと握る。


たまに見せる、不器用な愛情表現。


そう、これが久留米圭介なんだ。








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