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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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無謀1-3

「どこへ行くのですか」
 質問には答えず、窓の外に視線を向けたまま無言で手を伸ばしてきた。ハッとしてバックミラーに映る運転手をチラッと見た。
 田倉は普段バッグは持ち歩かない。入社した頃、電車の網棚に貴重品や大事な資料の入ったバッグを置き忘れ、連絡したが結局見つからずにひどい目にあったと、笑いながら話してくれたことがある。それ以来、外出時にはできるだけ手ぶらにするらしい。今日は黒いショルダーバッグを持っている。見たときから少々奇異に感じていた。
 交差点の手前でタクシーを停車させた。
「すぐに戻ってきますから」と言ってギュッと手を握ってから、バッグをつかんで車を降りるとコンビニに入っていった。戻ってきた田倉はレジ袋から購入したものを確認してバッグの中にしまい込んだ。
「どこへ行くのですか」
 強い口調でもう一度聞いた。口の端を上げるだけで答えない。奈津子はもう分かっていた。
「まさか、そんな、ありえません」
 バックミラーから運転手の視線を感じたので声を潜めた。また腕を伸ばしてきたのでサッと手を引く。
「そんなの無理に決まっています」
 今度は強引に握ってきた。抵抗するが力強く指が絡みつく。
「田倉さんはそんな人ではなかったわ」
「では、どんな」
 一瞬、言葉に詰まったが「することが、卑劣です」と、小声でいった。
「不倫は卑劣ではないのですか」
 答えに窮し、顔が熱くなるのが分かった。手を撫でられる。
「黙っていれば分からない。そうでしょう。今までだってそうしてきました」
「でも、無理です。お願い、ほかで」
「ほかとうとどこで」
 握っている手を自分の股間にのせる。そこは膨れあがっていた。振り払おうとする手を逆に強く引かれ、手の甲の上に大きな手を重ねられた。
「こんなところで、やめてください」
「ホテルの中ならいいのですか」
 手首をつかんで、手のひらを無理矢理広げて握らせる。
「今日のあなたに会ってからずっと、この調子なのです。これをあなたに」納めたい、と耳元で囁かれた。手のひらの中で脈打つ慣れ親しんだ形が脳裏に再現され、おなかの奥がキュッと収縮した。
 待ち合わせ場所がホテルではなかったということは、しばらく外でデートをしてからホテルに入るのだろうと思っていた。しかし田倉はそんなことは考えていなかった。
 自宅のかなり手前で降りた。放っておくと家の前まで誘導しそうだったので、奈津子が運転手に車を止めさせたのだ。


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