深遠な疼き-4
風呂は狭いので旅館のような愛撫は出来ないが、それでも小さな頂きを何度か越える濃厚な刺激を受け、布団に移ってからは局部が麻痺するほどに舐められた。乳首もお尻も、もちろん割れ目も。そして意外に感じたのは脇の下である。
腕を、ばんざい、させられて、
「いやん……」
最近、処理をさぼっていて、私は薄い方だけど、綿ぼこりみたいな毛が生えていて恥ずかしかった。
「きれいですよ。発毛あるところ、自然がいい」
『りょうちゃん』の唇がぬめっと吸いついた。
「ああ……」
けっこう乳首に匹敵するくらい秘部に直結する。舌が動き、同時進行で指が秘唇をそっと掻いてくる。
「ああ!いい!」
「濡れてる……」
(濡れてるなんてもんじゃないわ……)
奥さんはどんな反応を示したのかしら。陶酔に陥りながら思った。
愛撫はあくまでもやさしい。激した感情をぶつけてきたりはしない。
手を伸ばしてペニスを握った。
(硬い……夫と変わらない……健吾ほどではないけれど……)
力をこめるとはね返してくる。
「今度は、私が……りょうちゃん」
早瀬さんは火照った顔を綻ばせた。
仰向けになった『りょうちゃん』の体に若々しさはない。全体に脂肪がついておなかは弛み、筋肉の盛り上がりもほとんど見られない。でもペニスはそこだけ別人のように漲って隆々としている。浅黒い亀頭は見ているだけでも膣が抉られるような迫力がある。
握って、先端にキスして、裏筋、尿道口を舐めていく。
「うーむ……」
含んで、舌で形を辿るように舐める。そして、上下にゆっくり動いていく。
「いい気持ちだ……」
エラが張ってくる。亀頭も硬くなって、『りょうちゃん』の息遣いが速くなる。
スポスポ、ネチネチ……。テンポを速めていく。
「ああ、いいよ、いいよ」
手の扱きも加えて、回転する。
「ああ……上手だ……」
強く吸い上げてからスポッと抜いた。
「あう……」
「気持ちいい?」
「うん、とてもいい」
口は離しても手は亀頭を揉み続けている。
「ほんとに硬くなるんですね」
「初めて飲んだ時は信じられなかったな。自分の物とは思えなかったくらい」
「それでまたミーちゃんと充実した夜になったんですね」
「挿入の実感は若い頃が甦るようでした」
私は堪らなくなってペニスを握って跨った。
「入れちゃうよ。りょうちゃん」
「ミーちゃん……」
液を塗すまでもなく裂け目は先端を呑み込み、滑らかに膣を潜った。胎内にまで響いた。
「ああ、感じちゃう……」
いっぱいに埋まって、体をよじると形を感じるほど漲っている。
じっとしていられなくなって動き始めると、りょうちゃんの手が腰を抱えて制した。
「少し、このままで……ミーちゃん」
「はい……」
私はりょうちゃんの胸に重なって、繋がったペニスを締めた。
「ああ、いいよ。ミーちゃん……」
りょうちゃんの腕が私を包んだ。
「こうしていても気持ちいいでしょう?」
りょうちゃんは頬をすり寄せて言った。
「はい……でも、動きたくなっちゃう」
「それは若いからだろうね。性欲がエキスみたいになって濃厚なんですよ。だから体の奥からエキスが燃えたぎってくる」
心地よさそうに目を閉じている。
「若い頃は私もそうでした。絶頂に向かって突き進むばかりでした」
「ミーちゃんも?」
「ええ、それは、すごかった」
「齢を重ねるとみんなそういうセックスになるんでしょうか」
「さあ、他の人のことはわかりませんが。それと、妻は……ミーちゃんは変わりませんでした」
「え?」
「ミーちゃんはずっとミーちゃんのままでした。体は弱っていたはずなのに激しさは衰えを知りませんでした」
奥さんとの話を思い出した。
「激しいって、お風呂で失神するほど?」
「なぜそれを……妻が?」
「はい。ミーちゃんが。お洩らししちゃうって」
気がつくとペニスが縮んで抜けそうになり、腰を動かしたがぬるっと飛び出した。早瀬さんの目には薄っすら涙が滲んでいた。
ペニスをふたたび挿入しようとしたが、硬度が足りない。
「いいですよ。また硬くなります」
早瀬さんは起き上がって胡坐をかいた。
私も横座りになって向き合った。
「あなたはきれいだ。若いだけでなく、胸も肌も、男を惑わす魅力をもっている」
「そんなことないですよ」
「いや、箱根で魅了されて、今日、改めて触れてみて、言葉にできないほど素晴らしいと思いました」
「ミーちゃんはもっと素敵だったでしょ?」
「お洩らしとあなたは言ったけど、妻は私に放尿したんです」
理解できなくて黙っていた。
「イキそうになると私に跨ってオシッコをかけるんです。かけながら絶頂に突入するんです。そして必ず叫ぶんです。『りょうちゃんはあたしのもの!』って……」
思わず洩らす、のではないという。
「かけるんです。体全体、ペニスにも、時には顔にまで」
私は言葉を呑み込んでから、
「どうして……」
やっとそれだけ言った。
「嫉妬だったと私は思います」
年老いて、さらに病に冒されて朽ちていく自分を見つめた時、まだ活力を残した夫にふつふつと妬け付く炎が燃えた。欲望のままに生きた過去は脳裏の底に消え、ただ縋りつくことしかできなかった。
「妻がそう言ったわけではありません。私の想像です。妻はあなたに自分の想いを化身しようとしたのかもしれません」
りょうちゃんのペニスが勃起して、私を仰向けにすると被さりながら訊いた。
「疼きますか?」
「はい……」
「その疼きはご主人のものであるべきです。しかし、夫婦そろって身勝手だが、今日だけ、ミーちゃんになってください」
カチカチになったペニスが一気に入ってきた。
「りょうちゃん!」
「ミーちゃん!」
突き上げてくる快感の中、夫の顔がはっきりと浮かんだ。