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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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いい女でいさせて-6








どれくらい時間が経っただろう。


口のつけられていないアイスコーヒーのグラスは、氷が溶けきって色が薄くなって、表面についていた水滴もいつの間にかテーブルに水溜まりを作っていた。


恵ちゃんが帰って、残された空間はまるでお通夜みたいに静まり返っていた。


彼女に切り捨てられた陽介は、それっきり上の空で、フローリングに座って煙草を吸ってばかり。


山盛りになっていく吸殻と、ボンヤリした陽介を、あたしはただ黙って突っ立って見つめていた。


何と言えばいいのか、ただ強張って動かない唇。


頭の中では、最後に見せた恵ちゃんの涙と、他の男の名前が出てきて焦る陽介の横顔がグルグル巡っていた。





恵ちゃんを引き離し、望んだ展開になったはずなのにあたしの心は晴れない。


いつもあたしに笑いかけてくれた陽介の、初めて見る沈んだ顔に、罪悪感がチクチク胸を痛くさせていた。


「陽介……お風呂入ってきたら……?」


なんとか意を決して話すけど、聞こえないのか、また煙草を吸ってはため息と共に吐き出される煙。


それが目にしみてジワッと涙が滲む。


「陽介……」


それでも、陽介はボンヤリ煙草の煙を眺めるだけだった。


滲んだ涙がポツ、と足の甲に落ちる。


同時に、なぜか笑いも込み上げてきた。


陽介にあたしの声が届かないことなんて、わかりきっていたことじゃないか。





――陽介にとってあたしは、最初から声を聞く必要なんてない、身体だけの存在だったから。








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