当たった宝くじ-3
「なんや? いったいこの騒ぎはどうしたんや」
わいは八百屋のロクさんに聞いたんや。
「大変なことが起きたぜ。坂井さん、あんた商店街で宝クジ貰わなかったかい」
「ああ,貰ったけど、あんなものどうにもならんわ」
「それが横田さんの婆さんが、いっ1千万当てたんだよ」
「1千万って何等賞なんや」
わいはとぼけてそう聞いた。
「1等の前賞だよ」
「へぇぇ、ってことは1等は誰が当たったんや?」
「それがまだわからん。わからんがそれはおいおいわかる。で、坂井さん、あんたのは?」
「それが上の組とかは同じだったんやけど、最後がはずれや。せめて6千円くらいあたってほしかったんやけど」
「それ見せてくれんか?」
「なんでやねん。そんなもん腹立ったから破いて捨てちまったがな」
「残念、その番号が分かれば、1等を取った奴が誰か推理するのに一歩近づけるんだが」
「はずれ券なんかで当たり券がどうしてわかるんや?」
「消去法ってやつだよ。外れた奴の券を集めて外れた奴の名簿を作るんだ。そうすりゃ商店街の店長たちに聞けば、誰に配ったか記憶をもとにして消して行くことができる。そして残った人間が当たり券の持ち主ってことになるのさ」
「そりゃまた気長な話やなぁ。けれどワイみたいに捨ててしまった人間もいるんやから、完全にわかるってのは無理な話やないか」
ロクさんは前掛けで手のひらを拭いながら声を低めた。
「それでも少しは範囲が絞れるんだよ。言っておくけど、坂井さん、あんたも容疑者の中に入ってるんだぜ。破って捨てたって言ってるけどそれがハズレ券だったって証拠がないからなぁ」
「な……なんや、容疑者ってか? ははは……犯人扱いやなあ。面白い話やなあ。」
ワイはそこで笑って見せた。怒ると怪しまれるからや。ロクさんは真顔になった。
「ふん、たぶんあんたは違うと思うよ。あんたが当たってたら今の俺の言葉でドキッとしたり、怒ったりする筈だからな」
「それ、先に言ってぇや。ドキッとしてから怒ってみせたのにぃ」
「変なとこで見栄をはらんでも良い。とにかく、1等当たった奴はすぐ分かる。顔に出るからなあ」
ワイはおどけて見せた。
「えっ? 顔に? どっどうしよう。もうばれてしまったかいな。なーーんてな、一度くらい言ってみたいもんや」
「今、言ったじゃないか。一番分かるのは服装や金遣いの荒さで分かるもんなんだ。坂井さん、いくらあんたが当たった振りをしてても、そんなぼろぼろのスニーカーを履いて、ホームレスのような服を着ていれば誰もそうは思わない」
それが、ワイの狙いやと言いそうになってワイは代わりにしょんぼりして見せた。