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5千円のハグ
【その他 官能小説】

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当たった宝くじ-4

だがさっきからロクさんの様子がおかしいから気になって聞いてみた。
「なんかロクさん、さっきから顔色が良くないんやけど、なんかあったんか?」
「それが……後賞の1千万のことなんだ」
「後賞……そうそう、後賞は誰に当たったんや?」
「洋品店の親父が残った券を持っていて、その中に入っていたんだ。
けれど売れ残った券は商店街の事務局に戻すことになっていたから、殆どの店は発表前に事務局に戻していたんだ。
だが、洋品店だけは、残った券は自分の店で買い取ったと言って事務局に券の料金を持ってきたんだ。
しかも発表後にだ」
「そういう場合はどうなるんや?」
「発表前にそうした場合なら、約束と違うけれど認められたかもしれん。けれど発表後なら,当たり券ってことがわかってやったことだから、確信犯ってことになる。
それは事務局で没収して、商店街に平等に配分することになる」
「洋品店の親父はそれで納得したんかいな」
「納得しなかったから、警察に来て貰ってやっと渡して貰ったよ。これ以上言い張ると窃盗罪になるとまで言ってな。
だから洋品店は商店街と気まずくなってしまったのさ。
それだけじゃない。分配の仕方についても色々な意見が出てもめてるのさ。
ズルをした洋品店ははずせ、とか。事務局分の取り分が多すぎるとか。
売り上げの多さで配分すべきだとか。商店街に古くからいる者に多く、新参者には少なくとか……人間の欲は醜いもんだよ。それが原因で結束が強かった商店街がばらばらになってしまいそうなんだ」
「これもその1千万のせいなんやな。いっそワイがそれを頂ければ、争いはなくなるってもんやがなあ」
ワイはそう言うと、そこから離れて行った。
それから何日も経った。
横田さんの婆さんの所に親戚がおしかけて大喧嘩になったとか?爺さんが5人もプロポーズしたとか、怪しげな団体が寄付をせびりに押しかけたとか色々な受難の話が聞こえて来た。
商店街は各店が大喧嘩になって最後は多数決で事務局も洋品店も他の店と同額で平等に配ることになったらしい。
金の配布は終わったがあれほど仲の良かった商店街の人間が道路で顔を合わせてもそっぽを向いて歩いているというんや。
金というものは人間を狂わせる恐ろしいものだとつくづく思ったもんや。
さて、1等を当てた人間だが宝くじを渡した者の中に旅の人間がいたというんや。
その他の人間はみんな地元の人間で、どう見ても当たった様子は見られないから、そのよそ者が犯人?だという噂が広まった。
また宝クジは事務局が各店に渡す時に箱の中に入れてくじ引き方式で配った為に、当たり券がどの店に行ったかはっきりしない。
その為、発表前だが前もってどこかの店が1枚取って、それが当たっていたのを黙っているのではないかという憶測も飛んだんや。

 


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