二人の罪-1
ガランゴローンッ!、と言う痛快な音が、右へ左へと耳に響く。
「いえーいっ!またストライク!今日はツイてるなぁ!」
自分が、派手に倒したピンを見つめ、無邪気に万歳をし、飛び跳ねる楓。
次は俺の番なので、楓が居た位置に、俺が替わり、戻ってきたボールを手にし。
「いやー凄いね楓、もしかして昔ボーリング部に入っていたとか?」
俺が、今から投げるボールを磨きつつ、軽く彼女の方を向き、声を掛ける。
「まっさかぁ!そんな部、無いカラァ」
椅子に座る彼女が、足をパタパタさせ、軽く笑い飛ばす。
今、俺の後ろに座って居る少女は誰だ?
確かに楓は、気は利かないし、俺の求める温もりという物が、彼女には何一つ感じられない。出会って付き合い始めた頃は、何と明るくて楽しい人何だと、胸が熱くなる思いで一杯だった・・。でも彼女と付き合い始めて、序所に「この人は、本当の彼女じゃない」
と感じ初め、此間ガマンの限界が来て、つい先ほどまで彼女と楽しくデートをした水族館を、彼女を残し去ってしまった・・。
ダガそれは浅はかな行為だった。今の彼女と別れて何になる?
肌に合わないカラ別れる何て・・、別れてどうする?他に気の合う女性でも居ると言うのか?・・、ソレを思うと、ふと樹里奈の・・彼女の存在が頭に浮かぶ。
逢いたい・・、樹里奈に会いたい、そしてまたあの優しい温もりに触れたい
ケドそれは無理だ、彼女はこうしてる今もアノ病院で生死の境を彷徨っている、何より
今の俺に、彼女に会う資格など、ある筈も無い・・。
楓が、さっきから「投げないのか?」とでも言わん様に、不思議そうな顔でこちらに顔を向ける。
今の彼女と一緒に居ても、何も感じられない、かと言って楓と別れ、本当に付き合いたい
人と、面等向き合って、会う度胸も無い・・つまり今こうして興味も無い彼女と共に居るのは俺が臆病で逃げている事に他ならない。
ガゴゴゴーーンッ!
俺は、そんなモヤモヤを打ち消すように、思いっ切りボールを投げる
微妙に、1ピンだけが残る
「ふう・・」
1時間以上は投げ続け、流石に汗も出てきて、俺は倒れこむ様に椅子に腰を下ろす
「いやー、結構投げましたなぁー!」
自分で買ったジュースを持ち、俺の横に座り、缶を開け豪快に飲む
「・・ねぇ、今日は何だってまたデートしてくれたの?」
一呼吸し終え、大雑把ダガ、真剣な声で訪ねる
「何故って・・そりゃー君が好きだから」
大嘘、二股を掛ける奴はこういう事、平気で口にするのか
「でもこの前は見事去ってったよね?私を置いて、ケータイに掛けても繋がらない、というか無視されて・・いくらこの街に来て、半年は経つっつてもまだ分からない場所は
沢山あるのに」
「それは・・悪かった。」
俺は、そのまま楓に説明をする。
「・・その、急に用事を思い出してさ・・、俺ってばそうなると、つい・・周りが見えなくなっちゃってさ・・。」
嘘、本当は楓に嫌気が差して飛び出したのだが。そんなぎこちない俺の誤魔化しに楓は
「・・・・ふーん、そうだったの、・・てっきり私に嫌気が差したかと」
「そっ、そんな事は・・無い」
嘘、「そんな事は有る」と言いたい自分の口を、必死に押さえ。楓も多少疑問視をするも
俺の言葉を、信じたい楓は。
「なら!今まで通り私達、恋人同士って事ね!」
「・・あぁ、ゴメンよ・・傷つけて大変な思いをさせちゃって・・」
こうして臆病な俺は、彼女との関係を打ち切れず、そのままボーリング場を後にした。