LADY GUNを手にする日-1
大震災の影響で10月に延期された全国警察官技能検定競技大会に向け若菜は日々技術を磨いている。銃の練習は勿論、剣道、柔道の訓練も行っている。若菜は本気で優勝を狙っていた。
石山に頼み込み、毎日仕事が終わってから練習に付き合って貰っている。しかしなぜか石山は柔道に力を入れてくれない。剣道は熱心に教えてくれるのだが、柔道は軽い指導しかしてくれないのだ。石山の柔道の腕は本物だ。学生時代に全国大会優勝したほどだ。言わば最強の人間に教えて貰いたくて仕方ない若菜にとって軽い指導の石山には不満が募る。
「石山さん、今日は組み合って貰えますか??」
しびれをきらした若菜は試合形式での稽古をお願いした。
「それは…ちょっとなぁ…」
「どうしてですか!?まだ組み合いするレベルではないと言う事ですか!?」
苛つく若菜。
「いや、そうじゃないんだ。上原はもう型が出来てるし技も修得している。試合に出ればいいとこまで行くだろう。」
「じゃあ何でですか?」
腰に手を当て溜め息をついて睨みつける。
「…」
煮え切らない石山。
「はっきり言って下さい!!」
凄む若菜にタジタジの石山。石山は言いずらそうに言った。
「あのな…、その…若い女の子と組み合うの…やりずらいんだよ…。」
「はっ??」
思いもよらぬ答えだった。がたいのいい石山から出る言葉とは思えなかった。
「女の子に怪我させちゃマズいとでも…?」
「そ、それも少しはあるが、そうじゃないんだよ。」
「じゃあ何なんですか!?」
石山は頭をかきながら言った。
「む、胸元とか気になっちゃうしもし胸に触ってしまったらとか考えると集中できないんだよ…。」
「へっ…?そ、そっち??」
意外にも紳士的な事を言う石山に苛々も消えてしまった。
「最近お前、女らしくなっただろ?だから何か…。」
ニヤ〜っと笑う若菜。
「まさか石山さん、私に興奮しちゃうんですか〜?こ・う・ふ・ん♪」
石山は顔を真っ赤にして言った。
「ち、違うわ!!」
プイッと横を向いてしまう石山が可愛らしかった。
「石山さん?私はオッパイ触られても見られても構いません。だから本気出して下さい。私は強くなりたいんです。先輩に少しでも近づき…いや、超えたいんです。だからいくらオッパイ触られても何とも思いません。私は強くなる為なら何でもします。」
真面目な顔で言う若菜。
「上原…」
その真剣な眼差しに邪念を持っていた自分が情けなく思えた。
「例え石山さんが興奮してオチンチン堅くしても、私は気にしませんから♪キャハハ!!」
「!!言ったな!!」
恥ずかしさと馬鹿にされた事でカッとなった石山は若菜を思い切り背負い投げした。
「痛ったぁい!!…でも強いわ、やっぱ石山さん。」
「あ…、わ、悪い!つい…」
我に返る石山。
「私を強くして下さい。誰に負けないくらいに…。自分の身は自分で守れるように…。」
「上原…。分かった。ガンガン鍛えてやる。」
それから石山は若菜をガンガン投げ飛ばした。全く手を抜く事をしなかった。投げ飛ばされても投げ飛ばされても立ち上がる若菜に闘争本能を呼び起こされた。石山は若菜の心の中を十分に理解した上で投げ飛ばし続けた。