LADY GUNを手にする日-10
若菜が一番嬉しかったのは、たまたま署に訪れていた一般市民からの祝福だった。
「こんな優秀な婦警さんがいるなら私たちも安心だね〜!」
お婆さんの一言だった。どんな言葉よりも嬉しかったかも知れない。
「困った事があったらいつでも連絡下さいね?すぐ飛んで行きますから!」
「その時はお願いね?」
握手を交わした。他の市民からも声をかけられ笑顔が絶えない若菜だった。
垂れ幕まで用意され物凄い祝福モードだった。自分を励まそうとの好意なのだろうが、それはいかに自分がたくさんの人達に心配をかけていたかの現れでもある。感謝しつつも反省しなければいけない事でもあると感じた。
それから署長室に呼ばれた。その意味は分かっていた。気持ちが引き締まる若菜。もう浮かれてはいなかった。
「上原、よく頑張ったな。毎日の努力はしっかりと見届けていたよ。」
「ありがとうございます。」
深々と礼をする若菜。
「約束だからという訳ではない。この銃を渡すのは、上原がこの銃を持つに値する刑事になったと判断したからだ。上原、これからも頼むぞ?非常に期待しているよ。」
島田は若菜にLADY GUNを手渡した。
「…」
手にした瞬間、言葉が出なかった。父と静香の想いが詰まっているこのLADY GUN。ずっしりと手にのしかかったような気がした。
「私はこの銃に恥じぬよう、職務を全うする所存です。ありがとうございました。」
再度深々と礼をする。
「よくぞここまで…」
同席した中山が涙ぐむ。
「皆様のお陰です。約束します。私は必ず田口徹を見つけ出し絶対に裁きを受けさせます。」
もはや中央署のみならず警視庁の悲願でもある。島田も中山も深く頷き結束を誓った。
若菜はデスクに戻り暫くLADY GUNを見つめていた。様々な思い出が蘇る。そして様々な想いがこの銃に込められている事を確認した。若菜は待ち焦がれたこの銃を心ゆくまで握り締め、銃庫に預けて一息つきに自販機まで行った。