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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-1

皆さんは今までの人生で一度でも、理屈や常識では更々およびもつかない様な現象、または状態を味わったことがおありでしょうか?
恐らくは……いや、無いの一言に尽きるでしょう。
もちろん、中には机の引き出しから自称ネコ型の便利ロボが飛びだしてきて、ハッピーな人生を満喫できる運のよい方や、実は自分が前世ドラゴンバスターだったとかで、現世に蘇った凶暴な竜を相手に脆弱な家来と胡散臭い聖剣で決闘を挑まねばならないという、見るに耐え兼ねる可哀相な方もいることと思います。


皆さん、僕が言いたい事が分かるでしょうか?
普通は、そんな摩訶不思議な体験をすることはありえないのです。
そう、言わば『皆無』といっても過言ではないのです。
だから、取り入って特徴の無い健全な青少年の自宅にスナイパーライフルを所持したナイフを振り回す…………などといった様なイケメンが居候などするはずがないと僕は思うわけです。




鏡に映る自分の冴えない顔を見つめながら、制服のネクタイをきつく締めた。
そう、昨日の事は夢。
誰でも見る悪い夢だ。
自分に言い聞かせる様に何度も頭の中で、そう呟いた。
しかし、そんな僕の切実な思いもリビングに入った瞬間、木っ端微塵に打ち砕かれる事になる。
いつもと変わらぬ空間、匂い、家具類、電化製品……といった見慣れた風景の中に、一つだけ違う物が混じっているからだ。
言わばイレギュラー。
……夢なら覚めてくれ。 僕の目の前に広がる光景。
いつもと変わらぬ場所で、いつもと変わらぬ僕の朝飯を食らう烏丸 弾。
これが現実なの?
だとしたら辛すぎるよ。
神様、僕こんなマイノリティーな出来事には耐えられません。
お決まりだけどやっとく?
やっちゃう?
つーか、なめんなゴラァ!
「きっ、君がどうして僕の家に、しかもあまつさえ僕の分の朝食をおいしく頂いちゃってるんだぁぁ!」
言いながら、椅子に座る烏丸に迫っていく。
こいつが麻薬か何かやっちゃってる頭のラリったナイフ所持者だということは、昨日の一連の殺人未遂事件になりかねない行動で既に判明している。
甘いな、烏丸よ。データは取れてるんだよ。
恐らくこいつの事だ、僕が掴みかかった瞬間、またナイフを突き付けて………触るな、とか格好つけるつもりなんだろう。
しかし、そうは問屋が何とかだ。
僕は自己防衛の為に、現在右手をアン○ンチばりに回転させてるのだから。
そして僕は意気揚々と烏丸の肩に掴みかかった。


その瞬間、景色が一回転した。
地球の重力に逆らった僕の体は、烏丸の足払いから繋ぐ連携技で綺麗に宙を舞ったのだ。
上に映るは烏丸の整った顔立ちと低い天井。
そして、無防備になった僕の額に押し当てられるは、冷たくて黒い鉄の塊。
ひんやりと冷たい、その先端から火薬の様な匂いが鼻を抜けた。
ゆっくりと目線を右にずらすと、木製の床に綺麗な円形の小さな穴がぱっくりと開いている。
殺される、うん、こりゃたまげた。
「言い忘れていたな。俺に触れるな」
放心状態の僕に烏丸が呟いた。
「だぁぁぁぁ、もうこんなの嫌だぁ」
涙がちょちょ切れるというのはこういうことか。


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