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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-10

「ウグイ……か?」
その時聞き覚えのある低い声が聞こえた。
僕はウグイなんて名前じゃないし、可奈子も可奈子であってウグイではない。
ということで、彼女が振り向く。

「ああっ、烏っち」
「なんの用できた?」
無表情なままの烏丸の顔を優しく見つめながらウグイは口を開いた。
「決まってるじゃん、寂しがりやの烏っちが一人ぼっちで泣いてないか母親である私が見に来てあげたの」
「寂しがりやはお前だろう。それに俺はお前の息子になったつもりもない」

「もう、シャイなんだから。ベッドの中じゃ、あんなに激しいくせに」

「ああ、寝相は悪いな」

烏丸は普段、僕や他人には見せないような……決して穏やかな表情ではないが、自然な表情でウグイと話してるように見えた。

「ところで、あそこに転がっている黒マントの男はなんだ?」
烏丸はウグイが息の根を止めた男に目をやると、次に僕と気を失っている可奈子に目をやった。

「ああ、あれは烏っちが仕留め損ねた組織の追っ手。諜報部によると、烏っちの命を奪う為に敵さんはジャンキーを二人送ったんだってさ……んで、あの二人知り合い?」
言い終わった後、ウグイも烏丸の目線につられ、僕と可奈子を見た。

「二人……か、ならまだ一人、俺を殺る為に学園をうろついている追っ手がいる訳か……」

「ちょっ、ちょっと待てよ烏丸!お前や、そのウグイって人が目茶苦茶な人種だってことは分かったけど、まさかお前……その追っ手とか言うのを殺す気じゃないよな?」
僕の言葉を聞いた烏丸は冷たい眼差しを僕に向けながら淡々と答えた。
「ウグイと奴との戦闘を見ていたなら分かるだろう、奴らは普通の人間じゃない。長期間に渡る麻薬と薬の投与により、超人的な力を身につけた化け物だ。そして奴らの任務内容は俺の消去、及び障害になるものの排除だ。戦闘になれば俺が相手を殺さなければ……」
「ざけんなよっ!何が麻薬だよ、排除だよ。お前、目茶苦茶な奴だけど絶対に人殺しとか、そういう事はしない奴だって思ってたのに……。お前もそっちのあんたも最低だよ……、人間じゃないよ」
僕は二人を睨みつけると、気を失ったままの可奈子を背負い、その場を後にした。





雨が降り始める。
それは、どこか悲しげで切ない雨……。
夕日は雲に隠れ、大地を慰める様に風が吹いた。

雨は、二匹の鳥を包んでいた。

「烏っち、本当はあの時……戦闘になれば俺が相手を殺さなければ……お前達を危険な目に合わせる事になるっ……て言おうとしたんでしょ」
雨に打たれる烏の肩に、そっと手を置いたウグイは囁くように優しく呟いた。
「俺は……本当は死ぬ筈だったんだ。いや……死ななければならなかったんだ。なのに生きてる……。関係のない奴らを危険にさらしてまで……な」
ウグイは、言葉の変わりにそっと烏を抱きしめた。
鳥カゴの中で飼われてきた鳥が、たった一人で飛ぶには空は高すぎるのかも知れない。
だからこそ、ウグイは自由に憧れたのだ。
一人ではなく、皆で飛べる空を……、烏の支えになれる自由を……。


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