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LADY GUN
【推理 推理小説】

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-8

 ずっと翔太を抱いていた若菜。その姿を石山が見つけた。
 「上原、署に戻るよう連絡があった。間もなく自衛隊が来るそうだ。到着したら引き継いで戻るぞ?」
 「でも…」
このまま翔太を残していく気にはなれなかった。
 「事情は聞いてる。気持ちは分かる。分かるが…」
そう言いかけた時、翔太が口を開く。
 「お姉ちゃん、僕は平気だよ。」
 「でも…」
 「うちはここから凄く離れてるところに住んでるから、そのうちお爺ちゃんが迎えに来てくれると思うから。それまで体育館にいるよ。だからお姉ちゃんはお仕事に戻って。」
ようやく表情が変わった。若菜に微笑みかけている。その微笑が若菜には物凄くつらく感じた。
 「行こっ!」
若菜の手を握り引っ張る翔太。
 「翔太くん…」
翔太は石山の手も握る。
 (大した子だ…。)
石山は感心しきりだった。翔太を真ん中にして手を繋ぎ3人は歩き出した。
 「お姉ちゃんとお兄ちゃんは警察官なんだ。僕も警察官になりたいな。」
 「じゃあ大きくなったら一緒にパトカー乗ろうね?」
 「うん!」
きっと子供ながらに心配をかけまいと笑顔を振りまいているのだろう。そんな翔太が益々心配でならない若菜。目の前に続く体育館までの一本道…、若菜には辛くて長いこれからの悲観的な未来にしか見えなかった。しかし小さな子供が悲しみを乗り越え明るい未来への道としてしっかり見ている事に自分の弱さを思い知らされた。未だに静香の死を受け止められない自分と、両親の死を受け止め前へ進む翔太。つくづく自分が情けない人間だと感じた。
 「若菜お姉ちゃん、また会えるかな??」
別れ際にそう聞かれた。
 「会えるよ。今度会う時はもっとカッコいい警察官になってるからね!」
指切りげんまんをしてパトカーに乗る若菜。背後を振り返り翔太の姿が見えなくなるまで見つめていた。
 「大丈夫か?」
石山が聞いた。
 「別に泣いてないですから…。」
そっぽを向き窓の外を見つめる若菜。石山はそれ以上話しかける事はしなかった。
 (進まなきゃ。前へ…)
若菜の視線の先には一体何が見えていたのであろうか。死を受け止め険しい未来に歩き出した小さな少年から得たものは物凄く大きなものだったに違いない。


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