崩れていく関係-4
でも、ススムはどうやら自分が置かれている状況に酔っているのか、少し震えた声を絞り出した。
「そんなこと言うなよ……」
「だって……自分がセカンドだって考えただけで、嫉妬でおかしくなりそう」
自分でも臭い芝居をしているのが、なんだかこっ恥ずかしくて、彼の胸に顔を埋めながら、ンベッと舌を出す。
仕方ない、穏便に済ますには一芝居打つのも必要なんだ。
セカンドなんて、陽介との関係でずっと慣れてるから、ススムごときで胸が痛くなるはずがないじゃない。
これが陽介だったら……なんて考えると涙が出そうになってしまうけど。
そうぼんやり考えてると、ススムはあたしの両肩を掴んで、真剣な顔であたしを見つめた。
「……オレ、カノジョと別れるから」
「え?」
「正直、最初はヤれりゃいいって軽く考えてたけど……、傷つけて初めて自分が卑怯なことしてるって気付いたよ。それと同時に君を好きになってることにも気付いた」
「…………」
うわ、どうしよ。めんどくさいことになっちゃった。
ススムなんて眼中になかったのに。
そもそも、出会って数時間の女のためにカノジョを捨てるような男のいうことなんて信じられるかっての。
でも、ススムの顔は少し涙ぐんでいて、もう完全に自分の世界に行っちゃってる。
ダメだ、もうコイツは。
穏便に済まそうと、優しさを見せれば勘違いだし、もうここは多少手荒いけどハッキリ言ってやるしかないか。
そしてあたしはススムの顔を見上げると、困ったような笑顔を向けた奴が、静かに口を開いた。
「これからはくるみちゃんだけを大事にしていくって約束するよ。……くるみちゃん、好きだ」
「……ウザ」
「ん? どうした?」
「ウザいって言ったんだけど! なんなの、アンタ? さっきまで人を淫乱女とまで言ったくせに今度はカノジョと別れてあたしと付き合う? どこまで女をバカにしてんのよ!」
そう啖呵を切ると、あたしはもも上げをするみたいに右脚を思いっきり上げた。