崩れていく関係-2
「ごめん、やっぱ無理」
突き放すようにそう言ったあたしは、床に落ちていたショーツを拾い、脚を通した。
湿り気を含んで冷たくなっていたそれが不快で、思わず顔をしかめてしまう。
ショーツをこんなに汚してしまうくらい身体が昂っていたのに、陽介のことを考え出した途端にこれだ。
「は? 何言ってんの今更」
あたしの動作をしばらく呆気に取られながら眺めていたススムは、我に返ったのか、あたしの腕を掴んでもう一度ベッドに引き寄せた。
「痛っ」
あたしを組み敷いたススムの顔は、目がつり上がっていて、怒りの色に染まっていた。
「ふざけんなよ、下手に出てりゃ調子に乗りやがって」
「…………」
真っ赤になりながらあたしに馬乗りになったススムは、さっきの弱々しい態度からまた一転して、今度は強気になっている。
……今度はキレるのか。
確かに散々コケにした所もあるし、怒るのは無理もないけど、小さいなあとも思う。
あー、どうしようかなあ。
まあ、男の力に勝てるわけがないし、こういう場面で男がキレたら、女は怯えつつも男の欲望に応じるしか穏便に済まされないかもしれない。
でも、やっぱり陽介じゃなきゃイヤ。
そんなあたしの心の中を知らないススムは、鼻息荒くあたしの乳房を鷲掴みにした。
「お前だってセックスしたいからノコノコナンパに引っ掛かったんだろうが! 股が緩い淫乱女のくせにお高く止まってんじゃねえよ!」
出た、本性。
思い通りにならないと、力でもの言わすタイプなんだなあ。
あたしに散々コケにされたススムは、頭に血が上っていてもはや本能でしか動いていない。
両手はガッチリ押さえつけられてるし、このままヤられるのも時間の問題だろうな。
「……ススムくん、止めてよ」
「止めるかよ。さっきまであんなにアンアン言ってたくせに。セックス大好きなんだろ? すぐに気持ちよくしてやるよ」
そう言って蔑むように鼻で笑ってから、彼は履いたばかりのショーツに手をかけた。
仕方ないなあ。
あたしはフウ、とため息を吐いてから思いっきり冷めた声を出した。
「だって、カノジョに悪いもん」
すると、面白いくらいにススムの身体がビクンと跳ねた。
その様子が間抜けで、思わず小さく噴き出してしまう。
……やっぱり。
かけたカマが当たっていたことが、なんだか嬉しくなって、あたしはニヤニヤが止まらなかった。