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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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ダビング-6

 沼田は家路を急いだ。
 その夜、中古のノートパソコンを押し入れの奥から引っ張り出した。いわれてみれば確かに、ずいぶん前に会社からパソコンを支給されていた。パソコンくらい操作できないと、と考え、自ら要求したのであった。確か、石橋に借りるよう指示した。それを石橋はちゃんと覚えていたのだ。「もう何年だ?」半年だか一年後だかに返品する約束だったのを思い出した。
 借りてから一切触れていていないパソコンの電源を初めて入れた。どきどきしながら石橋に教えられたとおりに、おぼつかない手つきでDVDをセットする。胸に手を当て祈るような手つきをして十字架を切ったあと両手を合わせて拝み、最期は神社でお参りするようにぱんぱんと手を叩いた。パソコンから音は聞こえるが画面は真っ暗だ。
「頼むよ……パソコンちゃん」
 ここで大きな声をだしたらパソコンが起動しなくなる、と本気で思い、口の中で小さく早口でつぶやいたのであった。息を詰めてみていると青い画面にチリチリしたノイズのようなものが見え始めた。だがいつまで経ってもそのままだ。だんだん顔が引きつってきた。
「うっそー……そんな、やめてよぉ」
 石橋のアパートから帰るとき、水割りとツマミを蹴散らしてきたことを心から後悔した。口の中で「ごめんなさい石橋さま、今度お伺いしたときフローリングを拭きますから、ぴかぴかに……」と念仏のように唱えた。
 そのとき、いきなり大音響が鳴り響いた。「ここじゃ映らないな」「こんな広い駐車場作りやがって」「本当かよ、嘘だろう」――など、大音量は石橋の声だった。
「ひぇー!」
 肝を冷やした沼田は石橋の声に負けないくらいの悲鳴をあげた。
「ご、ごめんよ、石橋君! すいません、すいません」
 見えない石橋に謝りながら、音量の調整方法が分からず部屋の中を右往左往した。バタバタと部屋を駆け回り、はたと思いつき背広の中にある、いつも聞いているラジオのイヤホーンをつかみ出した。喉をひいひい鳴らしながら、這いつくばってパソコンにそれを差し込むと音はぴたりと鳴り止んだ。沼田はその場にへたり込んだ。イヤホーンからしゃりしゃりと音が漏れ聞こえる。隣の部屋で人が動く気配があった。ぴょんと跳ね起き、そちらを向いて正座をして身を強張らせた。その気配がなくなると、へなへなと体の力が抜けた。
 風呂に入りパジャマに着替えて、もう寝る準備はしてあった。フローリングの上に布団を敷いて寝ている。万年床だったので、布団の裏にカビが生えたことがあった。それいらい起きたら布団は畳むようにしている。朝の唯一めんどくさい仕事だ。ベッドにしようと思うが買いに行くのもめんどくさい。
 落ち着きを取り戻し、慌ててパソコンの前に座ると車内の様子が映っていた。
「驚いたぜ。すげえビデオじゃねえか、これ……」
 その生々しさに息をのんだ。
「なんてこった、本当に田倉が映ってやがる。この女が佐伯の……写真の奈津子だ」
 車の中で長時間、奈津子を突き上げていた田倉を見て沼田は唖然とした。
「なんてタフなやつ」
 中盤に差し掛かって沼田の目が輝いた。石橋からくすねた写真を手に取った。
「ここだ」
 その写真と同じシーンに差し掛かった。
「ビデオから比べりゃ、こんな写真くそだな」
 そういって写真をぽいと放り投げた。
 そのほかに奈津子が自宅と思われる家から出て来るところや、田倉と奈津子がホテルに入るところと出て来るところまで映っている。
「佐伯の家まで行ったのかよ。恐ろしいまでの執着心だな、あのバカ」
 ついさっきまで石橋に泣きながら謝っていたことなどすっかり忘れ、目をらんらんと輝かせ、最後のDVDを入れて画面を凝視した。部屋にいるのはもちろん一人っきりなので、パジャマの下は脱いでいた。はばかることなく勃起したペニスをしごくことができる。
「これはついこの間のことじゃねえか。下痢が治らなくてひーひー言っていた日だ」
 DVDの画面には日付が入っていた。ダイジェストのように編集したものらしい。ということは他にも何枚もあるのだろう。
「あのばかこんなの見て何してやがるんだ」
 自分と同じことをしているであろうことに、すぐに気づいて苦笑した。ふたりがホテルから出てきた。やがて田倉は奈津子の肩を抱いて公園に入って行った。
「なんだよ……公園に行ってどうすんだよ。え、本当かよ。いや、まさかな……だって今までさんざんヤッてきたばかりじゃねえか」
 たまにイヤホーンを耳に近づる。姿は見えないが石橋が男に怒鳴られている声が聞こえた。画面が宙を舞う。怒鳴り声から推定すると、いかにもヤンキーだ。当然女連れであり目的はあれ以外にない。女も男と似たようなタイプだろうが、ヤンキーの彼女だから間違いなく若い。
「映せよ、あのばか」
 車の中を撮っているときは、始めと終わりだけに入っていた。全くブレていないので、たぶんカメラを置いたままにしてどこぞへ行ったのだろう。だが今は延々と石橋の声が入っているしブレがある。石橋の声を聞くのが嫌でイヤホーンを遠ざけていたが、恐る恐る操作しているうちに音量調整の方法がわかった。音も聞く必要があると判断し、イヤホーンを耳に入れた。石橋に耳元で囁かれているような気がして、鳥肌が立ち腹も立つが我慢して聞くしかない。


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