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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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気の置けない存在-1








「いやあ、マジ助かった」


眉間にシワを寄せてクシャッとした笑顔を見せた陽介は、おもむろに割り箸をパチンと割った。


お店の中が湯気でしっとりとしているせいか、彼の頬がやけにつやつや輝いている。


カウンターで肩を並べて座っていたあたしは、そんな彼をチラリと一瞥してから同じように割り箸を割った。


狭くて汚い、メニューの少ないラーメン屋。


そこであたしは、プレゼントを買うお手伝いをしたお礼として、醤油ラーメンをご馳走になっていた。


陽介はプレゼントを買って満足したのか、お店のロゴが入った小さな紙袋から包みを出しては嬉しそうに眺めている。


そんな様子を見つめながら、あたしは呆れ顔で口を開いた。


「ちょっと、せっかく綺麗にラッピングしてもらったんだからやたらと出すの止めなさいよ。ラーメンの汁が飛ぶわよ」


「だって、やっと任務が完了できたかと思うと嬉しくてさー。達成感ってやつなのかな」


まるで自分がプレゼントをもらったみたいに喜ぶ姿を見て、この人はカノジョを大切にしてるんだなあ、とあたしまで嬉しくなってくる。


そんな彼と目が合えば、イタズラっぽく微笑まれて、その無邪気な笑顔についつい目を反らす。


ときめくとか、そんなんじゃないけど、イケメンと目が合えばやっぱり、照れる。


だからあたしはそんな自分を隠すみたいに、わざとお説教ぶった口調で陽介に言った。


「でも、ホントはプレゼントなんてあんたが一人で一生懸命頭を悩ませながら選ばなきゃいけないんだからね?」


「なんで?」


「それでも、あんたが選んだって事実が大事なのよ! あんたがカノジョのために色々考えてくれたってのが、何よりも嬉しいはずなんだから。今回は手伝ったけど、次からはあんた一人で選んであげるのよ?」


「へいへい」


肩を竦める陽介は、プレゼントの包みを紙袋にしまってから、ようやくラーメンを食べ始めた。






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