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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ナンパ野郎-8

「バカね。そんなこと言ったら警戒しちゃうでしょ」


「あ、マジ? んじゃ今の聞かなかったことにして」


「もうダメ。危険人物認定」


そうクスクス笑うと、男は少し焦ったみたいに顔の前で合掌してきた。


「な、頼むよ。俺マジで変なコトしないから! あのデパートについてきてくれるだけでいいんだ。人気のない場所に連れてかれそうになったら大声出していいから!」


その必死に頼み込む姿とは対照的に、あたしはとうとうお腹を抱えて盛大に噴き出してしまった。


「え? なんで笑うの?」


「そんな言い訳してたら、下心がありましたって言ってるようなもんじゃん」


「いや、マジで下心はないんだって! 信じてくれよ!」


必死な様子の男に笑いが余計に止まらなかった。


今まで好意を寄せてきた男達は、たとえカノジョがいても必死でそれを隠してあたしのご機嫌をとっていたっけ。


だからこのバカ正直な男がなんだか新鮮に思えるのかも。


ホントにカノジョのプレゼントを買うみたいだし、仮に下心があるならカノジョの存在を絶対隠すと思う。


……まあ、あのデパートの中だけならいいかな。


「……予算は?」


しばらく迷っていたあたしが、そう結論づけると、男はパッと顔を輝かせた。


「えっ、ついてきてくれんの!?」


そのあまりに嬉しそうな顔に、カッと顔が火照ってしまった。


ヤッバ、可愛い……!


咄嗟に顔を俯けて、奴から目を反らすあたしを、男は不思議そうに覗き込んでくる。


「あれ、どうした?」


「い、いい言っとくけど、あたしにだって彼氏いるんですからね!」


「うん、わかった」


間近にある男の顔をまともに見れなかったあたしは、慌ててそう予防線を張った。


防衛本能ってヤツなのか、そうしないと何かが崩れてしまいそうな予感がしたから。


なんで、こんなナンパ野郎にドギマギさせられてんの、あたし!


そしてあたしは自分に喝を入れるべく、ペチペチと両頬を叩いてから、カツ、とヒールを鳴らし始めた。


早く自分のペースを取り戻さなきゃ、と、とりあえず深呼吸。


男は相変わらずヘラヘラ笑いながら矢継ぎ早に話しかけてくる。


「ありがとー、助かったよ。えー……何ちゃんっていうの?」


「人に名前を訊ねる前に自分から名乗りなさいよ」


「あー、そっか」


男は肩を竦めながら、あたしの横に並んで歩き始めた。


チラリと横目でその様子を伺ってると、


「陽介。俺、臼井陽介っていうの。ヨロシクね」


と、彼は人懐っこい笑顔で握手を求めてきた。


「あたしは……船川くるみ……」


「そっか、ヨロシク。くるみちゃん」


男にしては綺麗なその手を見つめながら、「デパートにいるまでの関係なんだから」と、密かに自分に言い聞かせていた。





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