気の置けない存在-5
あたしはかじりかけのチャーシューが、ポトンと丼に落ちたのすら気付かないまま、陽介を見つめていた。
あんなに一生懸命プレゼント選んでたのに、買ったプレゼントを嬉しそうに紙袋から出して眺めていたのに。
話を聞く限りでは順風満帆なカップルの印象だっただけに、陽介の小さな不満は意外に思えて仕方なかった。
「なーんか、怖っ。陰でそんな不満言うなんて」
冗談めかしてそう言うけど、半分は本音でもある。
仲良く付き合っている彼氏が、他の女に愚痴をこぼしているなんて知ったら、どんな気持ちになるだろうか。
でも、陽介はうろたえもせずに淡々と話を続ける。
「いや、カノジョのことはもちろん好きだし大事だよ? でもさー、例えば『友達が彼氏と温泉旅行に行ったから、じゃああたし達は海外旅行ね』とか『プレゼントでどこそこの何をもらったから、じゃああたしはそれよりもランクが上のブランドのものちょうだい』とか。そんなんばっかだと疲れちゃうと思わねえ?」
「…………」
「なんつうか、俺のカノジョってやたら友達と張り合ってるから、結局俺のことホントに好きなのかなあって思うときがあるんだ。単なるアクセサリー感覚で付き合ってるんじゃないかって」
「……なるほど」
これだけイイ男と付き合う女なんて、カノジョはきっとかなりの上玉なんだろう。
でも、そういう女って、男からちやほやされるのに慣れているから、ワガママな娘が多いのかもしれない。
そして、類友って言葉があるように、カノジョの友達も似たようなタイプなら……。
カノジョなんて顔も知らないのに、陽介のカノジョが女友達と彼氏の自慢大会をエスカレートさせている図が勝手に浮かんできた。
「確かにそれは結構キツいかもね」
ついついポロリと出た言葉に反応した陽介は、やけに目を輝かせて「だろ!?」と得意気な声を出した。