気の置けない存在-4
ニンニクの香り立つ器を見ながら、苦笑いになる。
我ながら色気がないなあ、と。
彼氏のスグルには、クリスマスは行きたいとこはないのかと打診はされたけど、これといって思い浮かばなかった。
だって、クリスマスなんて、どこに行っても混むだろうし、疲れにいくだけなら家でのんびり過ごしたい。
以前、スグルにそんなことを伝えたら、「くるみは欲がないなあ」って呆れられたっけ。
ワガママ過ぎるのも付き合いきれないけど、ワガママを言わな過ぎるのも面白味に欠けるらしいから。
陽介はプレゼント選びも熱心だったし、わざわざお店を予約したりするタイプなら、あたしみたいな面白味のない女は結構ヒいちゃうだろうな、と思いながらチャーシューをかじっていると、
「あ、俺と同じだ」
と、言う答えが返ってきた。
同じ……?
キョトンとして彼を見れば、シシシと顔をクシャリと歪めたイタズラっぽい笑み。
「いやね、俺もホントはイベント重視タイプじゃないの。クリスマスに外に出歩いたって、人混みで疲れるだけじゃん?」
「だって……アンタ、カノジョのためにあんなに一生懸命プレゼント選んでたじゃない。わざわざ見ず知らずのあたしに頭を下げてまで」
「ああ、確かにめっちゃ真剣にプレゼント探してたよ。そりゃ、もちろんカノジョに喜んでもらいたいのは大前提なんだけど……」
そこまで言うと、陽介は目を少し泳がせてから気まずそうに口を開いた。
「実はさあ、カノジョがイベントをすげえ大事にするタイプなんだよね。雑誌の特集であるようなお店で食事したり、夜景の綺麗なホテルに泊まったりとか、そういうのを望むタイプでさ。……正直、カノジョのことは好きだけど、そういうとこは疲れるっつうか、根が面倒くさがりだから余計にしんどいんだよな」
ハハハと小さく笑った彼は、チョロリと赤い舌を出してラーメンをすすり始めた。