気の置けない存在-2
陽介と知り合ったあたしは、あれからそのままデパートへ向かった。
陽介のナンパ(ホントは違ったけど)から逃れるために入ろうとしていたデパートに、まさか二人で入るなんて。
それでも、カノジョの雰囲気や、似てる芸能人だとか、服のテイストを一生懸命話す陽介に、もうウザいと言うマイナスな感情は無くなっていた。
話題豊富で、面白くて、イケメンなのに飾らなくて、変な下心なんて微塵もなくて。
出会ってたった数分なのに、陽介はあっという間にあたしと打ち解けてしまった。
「でも、ピアスは頭に無かったなあ。俺的に指輪とか喜ぶんじゃないかなって思ってたから」
陽介は、割った箸を咥えつつ、もう一度プレゼントの入った紙袋をチラリと見た。
膝辺りにある、荷物置きにポツンと置かれた紙袋が、やけにラーメン屋とミスマッチ。
「そりゃ、指輪は喜ぶに決まってるわよ。特別だもん」
「だったら、何で指輪を選んでくれなかったの?」
「バカ。指輪なんて特別だからこそ、あんたが一人で選ばなきゃダメでしょ。他の女が選んだ指輪をプレゼントされたなんて知ったら、喜べるわけないもの。そうじゃなきゃ、カノジョと一緒に選ばなきゃいけないのよ?」
「そういうもんなの?」
「そういうもんなの」
おうむ返しにそう言うと、あたしは備え付けのニンニクすりおろしをドバドバラーメンの中に入れた。
おろしニンニクをたっぷり入れたラーメンが大好きなあたし。
隣にいるのが彼氏のスグルなら、ニオイが気になるからって手を伸ばさないんだけど、今隣にいるのは、もう会うこともないであろうナンパ野郎。
気を使う必要なんてない、と、もう一匙ラーメンに入れようとした所で、「あ、俺にも入れて」と、陽介が自分の丼を指差してきた。