幸福-6
そんな彼女の後ろ姿を見て、何だか罪悪感の感じた私は幸子サンに言われたからでは無く
も今度こそ帰ろうとすると・・
「!・・」
再び訪れた細い腕に感じる力強い手の平の感覚
「しゅう?・・」
彼は、私を引き止めようと腕を掴むも顔は下を向き暗い感じで
「しゅう私、今日の所はこれで失礼するよ、ここからは幸子サンの言うように」
「お願いだ!行かないでくれ!」
話を遮り叫ぶ彼、同時に腕を掴むその手の力が増し
「・・しゅう」
冷静に見ると彼の顔は、何処か怯え私の腕を掴むその手から震えを感じ、それを見て
私は思った・・
頼む!・・・・一人にしないでくれ!
と・・
ソレを悟った私は咄嗟に彼と共に近くに座り、震える彼の方を強く優しく掴んであげて
「・・あ、ありがとう・・有難う!・・」
震えた声で出した精一杯の感謝の言葉
私はそのまま彼が落ち着くまでずっとその肩を放さないでいた・・
それから数分し、彼から「落ち着いた、もう大丈夫」と聞かされ取り合えず安心した私は
彼に自宅付近まで見送られつつしゅうの家を後にした
それから改めて寝てる母を見に寝室へ行くとソコにある一人の男の姿が
「だ、誰だ!?」
彼の声に反応したその男が振り向くとそこに
「と、父さん!」
「本当に・・すまなかった!」
寝室で眠る母を残し、居間でしゅう幸子サンそして今まで行方不明だった父、龍馬さんと
三人で話をする
どうやらあの日、お父さんは家族を養う為、地元から遠い所まで知人に片っ端から電話を
掛け働き手を求めたらしい、彼もまた知人に迷惑を掛けたくない、こんな事実を知って
欲しくない・・と、最後まで抵抗はあったが自分のしでかした事を思い返すとそれが
馬鹿馬鹿しく感じそして名古屋の遠い友人がコンビニを経営していてそこで何とか働か
して貰いそこで全身全霊で働き部下の仕事も引き受けたりしてお金を稼ぎ、その金も
必要最低限節約し残りは全て迷惑を掛けた家族の為にコツコツと貯め・・
「・・ならどうしてその事を私達に言わなかったの?黙って私達を残し居なくなるから
つい・・」
「それは・・」
幸子サンの問いに言葉を失う掛けるも
「こんな・・こんな俺何かを・・」
あの日、失踪を決意した彼に家族に告げる・・何て考えは全く無かった、ただただ自分の
犯した罪に押し潰され、アレだけの事をしておいてこれ以上顔向け出来ず
「アレだけ・・アレだけの事をして、母さんに多大な苦労を掛け、幸子は看護士の夢が
途絶えそうになり、しゅうにもそんな母さんを助けようと一人その小さな体で支えきれない苦労を負わせ皆に償い切れない迷惑を掛けておいて・・それを・・それを許して欲しい
・・そう言いに来る様な物で・・とても」