きっかけは偶然に-5
「あ〜あ」
そんな声にハッとして声の方を見ると
しょうがないな。という顔をしてお隣さんが立っていた。
それでも何も言えない私に
「管理人室にほうきがあるから塵とりと持っておいで」
とエントランスの中の管理人室を指差した。
「え・・・でも時間・・・」
残業しての帰宅時間は10時を過ぎているはずだ。
「管理人さんはまだ起きてるよ。言えば貸してくれるから」
ほらほら。と促されて借りに行ったら
すんなりと貸してくれた。
もういないかな?と思ったのに
私が借りてくるまでお隣さんはそこにいて
私が掃くのを見ていたんだけど
ため息をつくと
「貸して」と言ってほうきで器用にご飯粒とおかずをかき集めてくれた。
器用だな。
と思って見ているうちに全てがすっかり綺麗になっていた。
「あ!」
「なに?」
これ以上なんだよ?
とでも言うように片方の眉毛をあげた顔が
街灯に映えていい顔だった。
今日はサングラスしてないんだ?
ううん。頭に乗っかってる。
あ・・・ぁ。
掃除をするときによく見えるように外してくれたんだ。
「なに?」
じっと顔を見ていると、なんだよ?と言うように
もう一度片方の眉をあげた。
この顔好きだな。