それぞれの世界-17
頭に浮かんだのは、塁とあの娘が仲良く肩を並べて歩いていた後ろ姿。
塁は、知らないうちに自分の世界を作り上げていて、あたしが入る余地を与えてくれなかった。
あたしは塁との世界だけを大切にしていたのに、置いてけぼりにされて一人ぼっち。
取り残されたあたしは悔しくて、気付いたら下唇を思いっきり噛み締めていた。
「……顔、怖いんだけど」
しかし、久留米さんの声に現実に一気に引き戻される。
見れば久留米さんは、少し困ったような顔をこちらに向けていた。
久留米さんにしてみれば、大して親しくもないあたしのお誘いを胡散臭く思うのは仕方ないし、断って当然なんだ。
「あ、さっきのは冗談なんです!
忘れて下さい!」
あたしは平静を装い、いつもの笑顔でそう言った……つもりが。
なぜか、目から涙が一筋零れてしまった。
塁には塁の世界があって、久留米さんにも久留米さんの世界がある。
わかっているのはそのどちらの世界にも、あたしが入り込む隙はないってことだけ。
結局、誰からも必要とされてない現実を知ってしまったから、それが少し淋しかっただけなんだ。