蜜月3-2
『え、入る? 何がです? ああ、そちらのことですね』
夫にとって救いがたい状況を知るよしもなく、屈託なく笑っていた。かすかな音をたてぬるっと引き抜いたペニスを見つめ「そうです」――と言った。痛みすら感じないのは、狂っている証拠だろう。
義理堅く『でも我が社としては、リサイクルに力を入れていることをしっかりアピールしないといけませんね』と続ける佐伯に「もちろんです」と答えながら、ペニスに張り付いてくる粘膜を練って混ぜ込むように挿入する。
その後も佐伯とどうでもよい仕事の話をしながら、彼の妻とセックスを続けるという、人の道にもとる行為を続けた。倫理の欠如がこれほどの快感を得られるとは思いもよらなかった。スムーズに出没を繰り返す粘土色のペニスは、熱で溶かした飴に浸したようであった。
以前彼女と入ったラブホテルがほぼ満室で、ひとつだけ空いていたのがSMに使用する道具を展示してある部屋だった。その中の一番大きなディルドには度肝を抜かれた。あんなものを持っている男に彼女が犯されたら――などと想像を巡らせたことを思い出した。際立って大きいのはそれだけで、田倉の逸物は他の大きなバイブレータやディルドにも引けを取らない。一般的に日本人の平均とされるサイズよりは明らかに大きい。若い頃から常に中心的な存在として位置してきた田倉の原動力はこのペニスかもしれない。この大きさこそ自信の源なのだと本気で思った。
『荷物を運んでいるのですね』
田倉の呼吸が乱れるのを耳にして佐伯はくすっと笑った。
「実はそうなんです」
結合部と肛門をずっと目で追っている。
『ではそろそろ失礼します』
「えー、そちらの方は全員?」
田倉は適当にそう言った。まだ切られたくない。
湿っているような墨色の肛門は中心一点にきゅっと絞り込み、田倉の好みの形を作っていた。ペニスの動きに合わせ生き物のように、ぷくっと開いては閉じる淫靡なうごめきを見せている。黒ずんだ会陰部には薄黒いほくろが三角に並んでいる。色が同化しているので、その部分を広げて且つ注意深く見ないと分からない。田倉は必ず広げてしっかり観察するので知っていた。
『そちら、といいますと?」
指で回りのしわに触れてみる。シーツに口を押し当てて呻いていた彼女がびくっと顔を上げた。
「ええ、そう、家の……」――と言って彼女のわき腹や腰を優しく撫でた。
『ああ、わたしの家族ですね』
分かったらしく佐伯は明るい声になる。
腰を動かしながら、チョコレートを塗りたくったような部分をいじくり始めた。中心だけは回避させたいようで、腰をもぞもぞとうごめかす。しわを伸ばすように愛撫するすと深く息を吸い込み、腰がくびれる。きゅーっと窄まるのがまたいい。田倉が止めようとしないので、彼女は手で口を押えたり、シーツを握りしめたりしている。
『その節は大変迷惑をかけました』
「いえ……」
水分を含んだような中心に触れると「あッ」――と悲鳴を上げた。声をあげるのは承知のうえだ。
『ははは、声がしましたよ。お嬢さんもがんばってますね』
「ええ、かなり、がんばっています」
思った通りの会話ができている。
『うちの娘は自分の部屋に籠もりっきりで何をしているやら、ははは。家内は役員会の会合があるそうで、まだ帰ってきていませんし……』
とうとう彼女のことを夫の口から引き出した。体中の血がペニスに集まった。それを分からせるため、腰を押しつけ最奥まで挿入した。
「はうッ」
肺の空気を全てはき出す彼女に満足する。勃起度は伝わったはずだ。彼のぼやきにも聞き耳を立てつつ、結合部のぬるつきを指ですくう。共同で生み出した粘液を肛門にこすりつけてみた。防衛本能が働ききゅっと引き締まった。いい感じでペニスも締め付けてくる。嫌がりつつも膣内はぬるつきを生み出し続けている。そのことを知られているせいか、わずかに腰を引いただけであった。
そこを羽で触れるような愛撫を続けた。かすかな呻き声は聞こえるが、通話相手に聞こえないよう配慮している。そう思っていたら『ははは、大丈夫ですかお嬢さんは』と佐伯が言った。