秋月の矜持-4
夏輝が警察の独身寮に帰り着いたのは夜の10時前だった。彼女は少しふらつきながらシャワー室から出て、部屋に戻ると、ベッドにばたんと仰向けになった。
「修平、修平……許して……」
夏輝は小さく呟いた。彼女の目からまた涙が溢れ始めた。
彼女は決心したように自分のバッグからケータイを取り出した。
ディスプレイを見た夏輝は小さく叫んだ。
「えっ?!」
――着信あり。27件。
「やだっ! 誰? こんなに」
夏輝は慌ててボタンを押して着信履歴を見た。画面に上から下までずらりと『修平』という文字が並んでいる。
「しゅ、修平っ!」
夏輝は焦って返信ボタンを押した。
『夏輝っ!』いきなり威勢のいい修平の声がした。『何やってやがったんだ!』
「しゅ、修平……」夏輝は力なくそう言って声を詰まらせた。
『おまえ、今度の土曜の夜、空けとけ。』
「えっ?」
『約束だぞ!』
「え? だ、だって土曜日は道場に行かなきゃ……」
『剣道と俺とどっちが大事なんだよ! 休め。道場には俺から言っといてやる』
「……相変わらず強引なんだから……」震える声でそう言った夏輝の目は真っ赤になっていた。