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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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ナンパ野郎-7

コイツから逃げることに気を取られ過ぎて、赤に変わっていたことに気付かなかったなんて、まぬけにも程がある。


や、やだ。恥ずかしい!


下唇を噛んで俯いていると、男はあたしの頭上でクククと笑い出した。


「そんな慌てて逃げなくても。ナンパだと思った?」


「……え、違うの? じゃあ、キャッチ? キャバとかAVのスカウトとか?」


予想外の答えに、警戒心が少し緩んだあたしが目を丸くしてそう訊ねると、彼は含み笑いをしながら首を横に振った。


「どれもハズレ。俺バイトもしてないただの大学生だし、カノジョいるもん。だから、そんな警戒しないで?」


そう言ってあどけなく笑いつつ、彼はあたしの腕を掴んだかと思うと、グイッとそのまま歩行者の邪魔にならないよう、端っこに移動させた。


チャラチャラしてそうなのに、さりげなく周りに気を配るその仕草に、不覚にもドキッとしてしまう。


そんなあたしの心の中なんてまるで気付かない男は、髪の毛をワシワシ掻きながら、わざとらしくゴホンと咳払いをした。


「実はさ、俺カノジョにあげるクリスマスプレゼント買いに来たんだけど、女の子が喜びそうなモノがさっぱりわかんないんだよね」


「……はあ」


「いろいろ店まわって見ればいいんだろうけど、ホラ、女の子向けの店は男が1人で入るには敷居が高くてさ。女の子がいてくれたらかなり入りやすくなるだろ? それに女の子が欲しいものは女の子に聞くのが一番手っ取り早いし。それでキミに声をかけたってわけ」


なるほど、餅は餅屋……ってことか。


不思議なもので、そういう事情を知ってしまえば警戒心はあっという間にどこかに消えてしまった。


そうなると、チャラそうなコイツは単なるナンパ野郎じゃなくカノジョ想いのいい奴なのかもしれない。


声をかけてきただけで、ナンパ目的のチャラ男と決めつけていた自分が恥ずかしくなった。


……でも、ここで一つ疑問が。


「なんであたしに声かけたの?」


「あー……」


すると男はバツが悪そうにまた頭をガシガシ掻いて、あたしから目を反らした。


「カノジョと服装のタイプが似てたから……って言えばいいんだけど、でもさっきすれ違った時にすんげえいい女だなって、気付いたら声かけてたってのが本音」


そう言って、舌を出す男に思わずプッと吹き出してしまう。


手の内晒しちゃってどうすんのよ。


でも、そのバカ正直さがなんだか可愛いとすら思えてしまった。







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