後編-7
(7)
(由里……)
彼女の温もりが甦ってきた。快楽の中、振り乱した髪に白髪があったことを思い出した。
(由里……辛かったのかな……淋しかったのかな……)
いつも明るい笑顔だったように思うけれど。……その裏側は見えない。
(彼女は遊んでいたのではない……)
ふと思った。
(何かを探していたのかもしれない……)
何を?……。
愛?温もり?拠り所?……
わからない。でも何かを求めて、探していた。そんな気がする。
(あたしも何かを探してた?……)
夫もいる。やさしい夫。息子もいる。何を探すことがあるだろう。
ドアがノックされ、二人は同時に時計を見た。
「Sさんだわ……」
「時間ね」
貴恵の目元がほんのり赤らんだ。
「あたし、何だかこわい……」
弱々しいく視線を落とした。
「何言ってるの。愛しているんでしょ。心を開けばいいのよ」
「うん……」
立ち上がりかけた貴恵が顔を寄せてきた。
「さっきの話ね、運命のチンポを掴め……。あの話、Sさんなの。秘密よ」
そして本当に嬉しそうな顔を見せた。