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密約旅行
【熟女/人妻 官能小説】

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前編-1

(1)


 知恵子は自分の体の明らかな変化を自覚していた。由里と行った秘密の旅行以来である。
 目覚めたというのだろうか。とにかく体が常に軽く感じられて敏感になったと思う。夫と交わる時もこれまで味わったことのない頂に達して驚いたほどである。夫のテクニックは変わらない。だから自分が変わったのである。行為の最中、自ら頭上に輝く歓喜の星を目指して突き進んでいく感覚をはっきり意識した。

 その星は高ぶりの中で突如として現われる。それをひたすら追い求め、縋りつき、がっちりと掴み取って酔いしれるのである。だから自然と積極的になる。いつの間にか夫を組み伏せていたこともある。
「どうしたんだ、すごいな」
刺激を受けた夫もいつにない硬直で応じてきた。

 しかし火のついた知恵子の体をいつも満たす精力は五十を過ぎた夫には望めない。知恵子は四十二歳、熟女、女の盛りである。求める彼女を置き去りにして眠ってしまうこともしばしばであった。それに、息子は思春期である。気になって激しい行為はできない。
 悶々として繁みの奥へ指を這わせる。自慰の快感も以前と比較にならないくらい鮮烈になった。

 体そのものが変わったのか。脳の感受する部分がどうにかなったのか。ともかく、
(眠っていたあたしが目覚めたんだ……もともと持っていたものなんだわ……)
そしてその感覚はまだまだ広がっていきそうな予感すらある。
(体が求めているんだもの、満たしてあげなきゃ……でも……)
 こうなったのはあの旅行。初めて夫以外の男性と交渉を持ったあの夜からだった。
 

 ちょうどひと月前、その話は高校時代の親友の由里からもたらされた。
久しぶり再会に思い出話に花を咲かせたあと、由里がやや上気した顔を寄せてきた。
『見知らぬ男性との不倫旅行』……
(不倫……)
そんなこと、考えたこともない。……いや、妄想したことはあったか。一人で指を操りながら。……

 旅行といっても男と二人で行動するのではない。表向きは知恵子と由里の友人同士の旅行である。ありきたりのバスツアーに申し込み、相手の男も二人組で参加する。そして夜、それぞれの部屋でセックスをたのしみ、翌朝にはまた見ず知らずの他人として繋がりを遮断する。
(すごいこと考える……)
驚いて言葉もなかったが、聞いているうちにアソコが濡れてきてしまった。

 スナックを経営している友人が客の中から相手を見つけてくれるのだという。みんな素性の知れた長年の客だから心配はない。
『違ったセックスを知りたくない?』『相手にしてくれるのはいまのうちよ』『絶対にばれないんだから』……
「個人的な関わりは一切ないの。一夜限りの男」
想像もしなかった『遊び』に心が揺れた。

(夫を裏切る……夫以外の男を知らない……知りたい……)
「たまには『外食』したいじゃない。あたしもう三回も行っちゃった。ツアー代は相手がもってくれるの。負担なし。その上こっちには拒否権があるの。嫌だったら拒めるの」
説得されて好奇心が勝ったのだった。

 そして体験した不倫ツアー。緊張しつつも燃えたのは確かで、アソコを舐められたし、知恵子も一物を頬張って乱れた。だが、相手の顔は憶えていない。
 記憶が飛んだのか、わからないが、絶頂には至ってはいなかった気がする。それでも弾けて、鋭利な快感が貫いた。
 夫以外の男性との性交渉。その心理状態が昂奮の波を大きくしたものとみえる。終わってみると満たされた体の充溢感がない。

 由里と部屋で合流して話を聞くと、彼女も『イッテ』ないという。それどころか、
「今回の相手、物足りなかったわ……」
四回目となれば要領も分かっていて相当な期待をもっていたにちがいない。呆気なく終わってしまったとけだるそうに言った。

「ビールでも飲もうか」
「うん、飲もう」
結果はどうであれ大胆なことをしたというのに結構平気な自分に驚いた。それだけでなく、ふと、妙な気持ちに包まれた。
 冷蔵庫に向かう由里の後姿を何気なく目で追っていた時のことだ。浴衣の上からでも豊かな女の肉感がわかる。
 不意に秘所が疼き、
(彼女、満たされてないんだ……)
何とかしてあげたい……。そんな想いが滲んできた。自分ももやもやしている。同性に性的感情を抱いたことはない。
 秘密の旅に出た解放感だろうか。
 知恵子は一度言葉を呑み込んでから言った。
「由里……舐めてあげようか?」
由里は動きを止め、笑顔を消したあと、真顔になった。 


 

 


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