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歪愛
【兄妹相姦 官能小説】

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幸せな1日-2

いつもの通学路とは反対方向の駅に向かって杏樹は周りの目を気にすることなく全力疾走した。
「はぁ…はぁ…」
部活に入る余裕のない杏樹は必然的に帰宅部だ。完全に運動不足の彼女はたった徒歩5分の距離を走っただけでも、肩で息をする羽目になる。
「大輔くん…どこだろ?」
前かがみになり、膝に手をついて呼吸を整えながら駅のロータリーにあるありふれた噴水の周辺をきょろきょろと見回した。
(もしかして、先についたとか?)
腕時計を確認してみると約束の時間を15分ほど過ぎている。今まで約束の時間に遅れたことがない彼が遅刻してくるなんて珍しいな…と噴水の周りを回っていると、
(あ!いた!!)
杏樹の視線の先には、噴水の端にゆったりと足を組んで腰掛けている大輔の姿があった。
学校が同じだけあって、休日以外はほぼ毎日顔を合わせているが、それでもいつもの制服姿ではなく私服姿の大輔を見て杏樹は鼓動が高鳴るのを感じた。
(大輔君かっこいいからな…)
高校内でも女子からかなりの人気がある彼が告白してきたときは、杏樹も目を見張り、最初はからかわれているのかと思っていた。しかし、何度も熱心に口説いてくる大輔に彼の本気を感じて付き合うことになったのは今から半年前くらいだろうか。
今でも、なぜ彼が自分のことを好きになったのかはよくわからない。
「あーんじゅ。何百面相してるの?」
「きゃっ」
突然目の前に現れた大輔に杏樹は小さな悲鳴を挙げた。
「ごめん驚かせた?でも結構呼んだのに自分の世界に入り込んじゃってるからさ」
どうやら杏樹が悶々と考え込んでいる間に、彼は杏樹に気づき近寄ってきていたようだ。
「大輔くん!ごめんね遅刻した上に悲鳴なんてあげちゃって…」
「いいよいいよ。そんな待ってないし。でも悲鳴あげられたのにはちょっと傷ついた。」
彼は目線を下げてがっくりと項垂れて見せた。
「ほんとにごめん!わざとじゃないの」
顔の前で両手を合わせて必死に謝罪する杏樹をちらっと横目で見て、大輔は我慢できないとばかりに手を伸ばして彼女の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「ははっ。杏樹ってほんとからかいがいがあってかわいい!ありえないくらい純粋でさ、嘘がつけなくて…だから俺、杏樹に惚れたんだよね」
照れもしないで爽やかに笑う大輔になぜだかこっちが恥ずかしくなって杏樹は赤くなった頬を隠すように俯いた。
(わたし、嘘くらいつくし…)
今朝の兄とのやり取りを思い出すとずきりと胸が痛む。素直に『彼氏とデート』だと告げるのがなんとなく気が引けて大輔とでかけるときはいつも友達と遊びに行くなんて嘘を繰り返しているのだ。
「ほら杏樹、行こ?」
そう言って手を差し出してくる大輔の笑顔があまりにも眩しくて、杏樹は目を細めながらその手を取った。

「それで、さっきは何を考えてたの?」
緑の葉を瑞々しく生い茂らせている街路樹が等間隔に並んでいるメインストリートを歩きながら唐突に大輔が問うた。
「え?」
所狭しと連なっているさまざまな店のショーウインドウを流し見ていた杏樹は唐突な問いかけに一瞬何を聞かれているのか理解できず、大輔の顔をまじまじと凝視する。
「ほら、さっき駅でなんかぐるぐる考え込んでたやつ。」
少しの間考え込んでからあぁ、それはね、種明かしをするように答える。
「なんで大輔君はわたしのこと好きなのかなって思って」
大輔は今度は少し照れたようにはにかんだ。
「何その今更な質問」
「だって不思議じゃない?学校にもわたしより可愛い女の子なんてたくさんいるし、実際付き合ってるって知ってても告白してくる女の子もいるでしょう?」
別に杏樹は自分のことを卑下しているわけではない。杏樹はそれなりに顔も整っていて愛嬌もいいが、それでも圧倒的な人気を誇る大輔とは釣り合っていないな、と客観的に見て思うのだ。
彼は困ったようにうーんと呻いてから
「まぁ女の子に迫られることがあるのは別に否定しないけどさ。でも、どの子を見てもややっぱり杏樹がいいなって思う。自分では気づいてないかもしれないけど杏樹って周りの男からかなり人気あるよ?付き合う前は俺もほかの男に取られないか内心ひやひやしてた」
懐かしいことを思い出すように雲一つない青空を煽った大輔を見上げて、杏樹は首をかしげた。
「でもわたし、告白されたの大輔君が初めてだよ?」
「あぁ、それはさ…ほら杏樹って色々大変だろ?」
彼女は素直にこくり、と頷いた。彼は言外に杏樹の家庭に母がいないことを暗示している。
「家のこととかいろいろやらなきゃいけないからクラス会とかにも参加できてないみたいだし。だからみんな中々口説く機会がなかったんだよ…まぁ俺は我慢できなくて告白しちゃったけどね」
いたずらっぽく目を細めて、少年のように笑う大輔につられて杏樹も笑った。
しばらく、たわいもない会話を続けていると、それまでの人工的な木々は途切れ、代わりに生垣に囲まれただだっ広い芝地が見えてきた。
桶が気が途切れた入り口には「自然公園」という文字がプレートに刻まれている。
「今日は公園デート。たまにはこういうのもいいでしょ?」
そういって大輔に手を引かれて足を踏み入れていくと、その公園は杏樹が予想していたより広く、池にはアヒルなどの水鳥、木々の木陰には愛くるしいリスたち、芝の上には警戒心もなく昼寝をしている猫たちなど一見しただけで様々な動物たちが見受けられた。
「わぁ…すごい!」
放し飼いのような状態になっている動物たちに杏樹は感嘆の声を上げた。
「でしょ?公園っていうか小さな動物園みたいになってるんだ。杏樹、絶対こういうの好きだと思ってさ」
彼はいたずらが成功した子供のように無邪気な笑顔を見せた。
(ほんとにわたしにはもったいないくらい素敵な人)
「せっかくだから、アヒルに餌やりに行こうよ」
池のほうを指さして言う彼に杏樹は幸せそうに微笑んで頷きを返した


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