映像-2
ピンと伸びた脚に手を伸ばし、両方のひざの裏側をつかんでから――見えないがそうに違いない、そのまま無理矢理――石橋はそう思っている――押し込んでいく。そこに田倉の頭部が沈み、今は見えない。
「やめろ、田倉」
石橋はこの場面で必ずそう叫ぶ。
奈津子は惨い格好にされているのだ。石橋が絶望に打ちひしがれれるシーンであった。さらにキュッと締まった足首を見るたびに、なぜか胸も痛む。そして田倉は、この体勢のままかなり時間を費やす。
駐車場の隅にも蛍光灯のほの暗い光は届いている。薄暗いがもう田倉の目は慣れているはずだ。
「ここでそんな惨めな格好にしなくてもいいじゃないか。誰も見ていないところでやってあげろよ」
石橋らしい怒りの声である。
もう何度もナニしているわけだから、もっと明るいところで奈津子の全てを、残らず目にしているに違いない。この考えに行き着くたび気持ちが落ち込む。だが奈津子の方からここへやってきた事実がある。「もしかしたら、もっと田倉に見て欲しいのですか?」と、鼻の奥をツンとさせ、石橋は『進藤さん』に問いかけていた。
――だって不倫するのはファックが目的ですから、彼が要求すればどんないやらしい格好でもします。指示されれば、あっちもこっちも開きます。彼が一番好きなのは、わたしを惨めな格好にして、あそこをなめること。あんなところも、こんなところも、ああしてこうして、ずぼずぼ――頭の中で『進藤さん』がそう答えたので、石橋は身をよじって駄々をこねる。
起き上がった田倉の姿が見えた。自分の下半身に目をやり、ごそごそ動いたあと、奈津子の両足を持ち上げて肩に担いだ。
「ず、ずぼずぼだ……」
田倉が――位置を定めて――再び後部シートに消えた。白い両足が引きつったあと、見えなくなった。
「こんな狭い車の中でなんてことを! くそっ、くそっ」
罵声に合わせ、石橋も滑稽なくらい体を引きつらせていた。
画面から二人とも消えているので、すぐに癇癪を起こしたような激しい動きをやめた。ペニスも入れられる『進藤さん』の口とキスをしながら――言うまでもなくそこは綺麗に洗ってあるから大丈夫――ゆったりとした動きに変える。これにも田倉は結構な時間をかけるため、画面を見ている意味がないので、石橋は目をつむって行為に没頭する。
不覚にもそのまま寝入ってしまい――健康なので一度も目を覚ますこともなく――翌朝目が覚めてから大いに照れまくったこともあった。
目を開けると田倉のシャツははだけ、三角筋と大胸筋が見えた。初めて見たときは、そのたくましさに息をのんだ。田倉は肩で息をしていた。
起き上がったのは終わったからではない。別の形に変えるためであった。奈津子を持ち上げるため田倉がシートに沈んだ。想像したくもないが抱き上げる間も、そこはしっかりつなげているはずだ。
画面の端の暗い部分に石橋のまぬけな姿がボーッと映っていた。