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桜の降る時
【初恋 恋愛小説】

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桜の降る時-6

 あたしは突然のことに混乱した。どういうこと?どういうことなの?
 「水城…。ごめん、いきなり。混乱するよね。えっと、何から話そう?」
 藤森先生はゆっくりと話し始めた。
 「俺は蓮の生まれ変わり。蓮は前世の俺なんだ。いつの頃からか、俺は前世での俺のことを夢で見るようになっていた。前世での蓮は、仕えている鈴本家のお嬢様に恋をしていた。駈け落ちの約束をしていた。でも、身分違いの恋は許されなかった。俺と…、前世の蓮とさくら、つまり前世の君は結ばれなかった。前世の蓮は死ぬ時に、来世でさくらと出会って結ばれたいと願った。前世の記憶が戻った俺はさくらを探した。なかなか見つからなかった。でも…。」
 藤森先生はあたしの手にそっと触れた。
 「やっと…やっと見つけた。初めて水城を見た時、さくらだって、さくらの生まれ変わりだって直感した。」
 あ…。だからあの時、あの自己紹介の時、あたしを見てさくらって呟いたの?だから藤森先生と前にも会ったような気がしたの?藤森先生のさくらって言葉が懐かしかったの?
 あたしの目からは涙が溢れていた。蓮、蓮。桜の下で待っていたのに来なかった蓮。一緒になれなかった蓮。でも、長い歳月を越えて、藤森 蓮としての、蓮に出会えた。さくらとしてじゃなく、水城 霞としてのあたしとして。
 なぜあの時、蓮は桜の下に来なかったのか。少し気にはなったけど、今はそんなことどうでもよかった。あたしの目の前に、蓮がいる。
 あたし、やっぱり藤森先生が好きだったのね。藤森先生のように、ずっとさくらを探していたわけじゃないけど、前世での記憶を思い出したばっかりだけど、思い出す前から、藤森先生に、蓮、にひかれてた。
 「蓮…。」
 小さな、小さな声で呼んでみる。大好きだった、結ばれなかった人を。そして、今も好きな人の名前を。
 「水城。今度こそ、今度こそ幸せになろうね。絶対に…。」
 あたしは頷く。今度こそ、ね。
 「さ、本題に移らなきゃ。水城の個人面談。」
 「そうだよ、先生!…ん?ちょっと待って…。前世では身分の違いだったけど…。教師と生徒っていうのも許されないんじゃ…?」
…。2人で固まった。お互い変な顔をしてた。みつめあった次の瞬間、笑いあった。
 「大丈夫だよ、水城。何十年もの時を越えて出会えた俺たちだよ?水城が卒業するまであと1年もないし。絶対に幸せになれるよ。誰にもばれないように付き合えばいいよ。」
 藤森先生は、歯を見せながらにこっと笑う。
 なんとか…なるのかしら?でも。とにかく、蓮に再会できてほんとによかった。今度こそ、蓮と結ばれたい。幸せになるんだ―。

 こうしてあたしと蓮の、秘密の恋愛が始まった。


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