彼の名は-7
久留米さんって人がどんな人なのか、一向にわからないまま黙っていると、
「ああ、あんな辛気くさいやつダメダメ」
と、文屋さんが苦い顔をしながら手のひらを立て、それを小さく動かした。
「なんで? アイツカッコいいじゃん。
お前なんかよりよっぽど男前だぞ」
大久保さんは、今度は茶碗蒸しをスプーンでチビチビ食べながら文屋さんを見た。
そんな言い草にムッとしたらしく、文屋さんは唾を飛ばす勢いでまくし立てはじめた。
「笑わないわ、無口だわですげー暗いじゃん。
いくらパッと見がよくたって、絶対性格に難アリだぞ!」
ムキになってるようにも見えるけど、いい大人がこうやって陰口を叩く姿ってすごく見苦しい。
顔も知らない久留米さんって人が少し可哀想になったと同時に、文屋さんに対する評価がますます下がっていき、あたしは気付かれないよう小さく舌打ちしてやった。