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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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彼の名は-8

そんなあたしのイライラに気付かない文屋さんは、ヒートアップしてきたのか、口をどんどん動かしてきて、いかに久留米さんって人が暗くて冴えなくて、社交性のない人間かを語っていた。


口角のあたりに泡を立ててひたすら陰口を叩く彼に、自然と眉がしかまる。


あーうるさい、文屋。


なんとかコイツを黙らせたくなったあたしは、


「久留米さんって人思い出しました!
確かにカッコいいですね!

あたし、あんな人めちゃくちゃタイプだなあ」


と、顔も知らないくせに、久留米さんのことをそうフォローしてから、大久保さんに微笑んだ。


「ね、そう思うでしょ?

なんなら話しかけてみれば?」


大久保さんは丸い顔をフニャッと歪ませたように笑うと、今度はエビの天ぷらをつゆにつけ、ご飯の上に乗っけてかっこみ始めた。


文屋さんはあたしの発言と、同意する大久保さんにさらにイラついたらしく、あたし達の間に割って入ったかと思うと、


「だってアイツ、ゲイなんだぞ!」


と大きな声を張り上げ、突拍子のないことをのたまった。


一瞬、会場がシーンと静まり返ってあたし達に視線が注がれたけど、大久保さんがすかさず、


「あ、昨日のドラマの話です」


とごまかしてくれた。


すぐさま辺りは再び賑やかになる。


でも、あたしは文屋さんの何気ない言葉がさっきから何度も頭の中で繰り返されていた。


……ゲイ?



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