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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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彼の名は-6

自分とかけ離れたタイプを言われた文屋さんは、少し悔しそうな顔であたしから視線を逸らした。


まさか、自分があたしのタイプに当てはまるとでも思っていたのだろうか。


厚かましい文屋さんに、思わず噴き出しそうになるのをこらえていると、大久保さんがいきなり、


「だったら久留米がいいんじゃない?」


と、サーモンの刺身を頬張りながらあたしに言った。


初めて聞く名前にあたしは首を傾げながら、


「誰ですか、その人」


と、大久保さんを見た。


すると彼は刺身をモゴモゴ咀嚼しながら、


「ほら、県税課の。

同じフロアなのに気付かなかったの、宗川さんは。

アイツ、結構カッコいいし宗川さんの理想通り背も高いしガッシリしてるよ」


県税課、と聞いてもピンとこない。


あたし達総務部は、東側のフロアに総務課、経理課、地域振興課が位置しており、西側に県税課が設置されているのだ。


同じフロアでも県税課の人達は真ん中の出入り口を挟んだ向こう側にしか行き来をしないし、あたしもこの仕事についてまだ一週間ほど。


ようやく総務部の皆さんの顔と名前が一致し始めた頃だったので、いきなり名前だけ出されても大久保さんが誰のことを言っているのかさっぱりわからなかった。



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