休日デートの目撃者-3
***
――月曜日。
一部始終を聞いたギルベルトも、意外そうな顔をした。ちなみに、やはり年齢も意外だったらしい。
「へぇ、あの彼がねぇ……」
「女の子は、本当に懐いているみたいでした」
重要な部分を、エメリナは付け足す。
あんなにマルセラが嬉しそうでなければ、どれだけジークが言い訳しようと、「今度はこの子を拉致か」と、とっくに怒鳴っていただろう。
ふと、ポケットからメール受信の振動を感じ、エメリナは携帯を取り出す。
「ちょっとすみません……あれ?」
知らないアドレスから、一通のメールが届いていた。
急いで開いたのは、件名が『腹黒ハーフエルフ』になっていたからだ。そして内容は、短い一文だけ。
『日記を笑ったのは謝ってやる』
「――そこなのっ!?」
不法侵入とか、もっと散々なことをやっただろう!
このアドレスだって、勝手に端末から入手したんだろうに!
思わず大声でツッこんでしまい、ギルベルトが怪訝な顔をした。
「なにかあったのか?」
「い、いえ、別に……」
慌てて手をふり、諦めの溜め息をついた。
ジークにしてみればきっと、エメリナにした数々の事は、バーグレイ・カンパニーの力を使い不法に事件を揉み消した犯人への、適切な措置となるのだ。
それでも唯一……エメリナが好きな人について綴った記述をバカにした事だけは、悪かったと反省したらしい。
「……」
ストラップに描かれていた似顔絵を思い出した。
目つきの悪さはそっくりだったけれど、あの絵の口元は、親しげに笑っていたのだ。
多分、マルセラには、時おりそういう顔を見せていたのだろう。
『もう気にしてないよ。こっちもデート邪魔しちゃったし。マルセラちゃん、可愛いかったね』
送信しながら、ニンマリと口元が緩む。
まるで、あの凶暴凶悪な人型の狼が、恋する気持ちを知ったようじゃないか。
ーーーそして1分後。
知らない携帯番号から着信があった。
「デートじゃねぇって言っただろうが!!!」
終