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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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尾行2-5

 車を駐車してきたような態度でいったん入り口に戻ってから、反対側に回り込んでいった。自然に振る舞おうとするが、極度の興奮により歩き方がぎこちない。足がもつれそう。セダンとは反対側の一番遠くの隅までたどり着き、エックス型に組まれた剥き出しの鉄柱の陰を伝い、そこへ向かった。
 駐車場の半分まで来ると、ますます心臓がドキドキしてきた。何とかセダンの近くまで行くと、サッと車の陰に隠れた。行動がいかにも怪しいがこれが精一杯だった。リアウインドウにはスモークフィルムが貼られていた。もちろん中は見えない。
 石橋は鶏のように首を振り警戒しながら、肩にぶら下げている安物のビニールバッグの中に手を突っ込んだ。バッグの中から引き出した手に、ハンディタイプのビデオカメラを握っていた。石橋はそれを睨みつけ、もう一度バッグに手を突っ込んで、今度はカメラの望遠レンズのようなものを取り出した。前方を見据えたまま、器用にそれをビデオカメラに装着していく。
 大枚をはたいて購入したビデオカメラと赤外線投光器である。当初、田倉の尾行は夜が多かったため、必需品だと思い、『進藤さん』を買う前に購入していた。もちろんビデオカメラは赤外線撮影に対応している機種だ。『進藤さん二号』の購入を躊躇しているのはそのせいでもあった。何のためにこんな物を購入したのかと、自分自身に何度問い質したことか。
「こんなときのためだ」
 そう結論づけ、電源を入れるとウィーンとうなり音をたてた。冷や汗をかきながら周囲に目を配り、震える手でセダンに向けた。背伸びをしてカメラを覗き込むと車内に二人の人影が映った。石橋は息を呑んだ。
 少々遠くでぼやけてはいるが、一人はむろん奈津子だ。スモークフィルムを透過しても頭しか見えない。もう一人はどちらかというと――佐伯であって欲しいと願うが……それはあり得ない。
「本当かよ……」石橋は呆然としながらも、カメラはしっかりとセダンに向けていた。
 カメラを持ったまま前屈みで前進した。前屈みで歩く理由は言うまでもない。すりむけた部分がこすれて痛いが、今はそんなことを言ってる場合ではない。
 フロントガラスは日除けシェードで覆われている。うす暗い駐車場の中で不自然だが、隅に停車しているせいもあり、目を向ける者はいない。
 液晶を覗くと、もう男女の区別はつく。奈津子の頭部が男の頭部の陰に見え隠れしている。男の頭が左右に揺れる。ずーんと胃が重くなり、深呼吸をする。
 男の陰に隠れて奈津子が見えない。
「もっと高い位置から」
 カメラを持つ腕を上げるが手がぶれる。
「だめだ、これじゃ映らないかも」
 それでもしばらくはそうしていたが、せっかくのチャンスを映せていない、なんてことにはしたくない。ことがドンドン進行してしまうではないか。イライラしながら前方を見ると、コンクリートの柱梁にジョイントボックスを見つけた。石橋は腕を伸ばし、周囲に注意を払いながら、ツマミを回してボックスを開けた。分厚いフタとボックス本体の角度を調整して、カメラを乗せてみる。
「こ、これだ」興奮した石橋は鉄柱に足をかけ、背伸びをして液晶を覗き込んだ。試行錯誤で位置を調整すると奈津子の姿が見えた。男の手が奈津子の頭を抱え込んでいたので、思わず目をつむった。不審極まりない我が姿にハタと気づき、カメラをそのままにして、逃げるようにそこをあとにした。駐車場から出ると、とたんに力が抜けた。


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