妖怪艶義〜小豆洗い〜-5
―――気づいた時には、辺りはすっかり暗くなっていた。
どうやら俺は、あまりに激しい射精で気を失っていたらしい。
周囲を見回すが、女の姿はない。
よもや全て夢だった、ということもないだろうが、あまりに現実離れしたひと時だった。
その場に居つづけても仕方がないので、とりあえず橋の上まで戻る。
するとコンビニ弁当がそのまま放置されていた。川に落ちた時、弁当だけ上に残してきたことを、今の今まですっかり忘れていた。
当然もう冷めてはいるが、わざわざ戻って温めてもらうのも気恥ずかしい。
まぁ冷めても食えないことはない、あきらめて家路につく。
家に着く。なんだかだんだん、すべてが化かされたような気がしてきた。
・・・・はぁ。とりあえず弁当食って寝てしまおう。
半ばヤケクソで、冷めたのり弁を口にほうり込む。なぜかめちゃくちゃ美味しい。
海苔をめくって下を見てみる。・・・なぜか白米ではなく赤飯だった。しかもそんじょそこらの物とはわけが違う、とにかく上等なお味だった。
コンビニがこんな気の利いたことをするわけがない、そもそものり弁に赤飯はないだろう。
となるとやはり彼女の、感謝の印、なのだろうか。
これから毎晩、コンビニ帰りに橋の上で耳を澄ますんだろうな。
そんなことを思いつつ、ひとり赤飯にぱくつく俺だった。