守りたい人がいる-3
一瞬、私は誰かが止めに入ったのかと思った。 違った。それは紛れもなく相馬の声だった。
「は?何言ってんだ。聞こえねえよ」
「やめろって言ってるんだ。僕にさわるな」
今度ははっきりと聞こえた。相馬の声は震えていた。だが、彼は立ち向かった相手をキッと見据えていた。背中を向けてはいなかった。
「うるせえな。口答えすんじゃねーよ!」
痺れを切らしたように相手が手を振り上げた。
体が自然と動いていた。
私は相馬の前に立つと、相手を制して睨み付けた。
自分でもよく分からなかった。
分かってるのは、いま、自分の胸にあるこの気持ちだけだ。
「やめなさいよ。嫌がってるじゃない」
「は?」
「みっともないと思わないの?よってたかって彼をいじめるなんて、最低よ」
私が言うと相手はたじろいだように、一歩後ずさった。ざわざわと教室のなかが騒ぎだした。
すると、いじめグループが次々となって相馬を罵った。
「オイ、相馬良かったな。助けてくれる人がいてよ。」
「ソイツ、お前のこと好きなんじゃねえか?」
「そうよ」
と私は彼らに向かって言った。
後ろを見ると相馬崇史がきょとんとした顔でこちらを見ている。
私は彼に向かって小さく微笑んだ。
「――彼が好きなの」
その時、相馬も確かに笑ってくれたような気がした。
end