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守りたい人がいる
【少年/少女 恋愛小説】

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守りたい人がいる-1

最近の私はどうもおかしい。

食べ物は喉を通らないし、授業にも身が入らない。
大好きな駅前のスイーツだって最近は行けてないし家に帰っても寝るだけで、ここ数日はほとんど何もしていなかった。
とかくやることなすこと全てが上手くいかない。
理由は分かってる。
アイツだ。
たぶんアイツのせいだ。



教室のドアを開けると私は真っすぐに自分の席に向かった。
途中に何人かと軽く挨拶を交わして席に着く。後ろの席にはすでに誰かが座っていた。
アイツだ。私は気付かれないようにじっと彼を見た。相馬崇史はうつむいたまま机の上を凝視していた。
彼の机はもうぼろぼろで、所々に傷が出ている。
しかし相馬が見ていたのは中心に目立つように書かれていた落書きだった。

“死ね”

相馬はやたら目だけ開いて自分の机とにらめっこしている。
そう。
相馬崇史は典型的ないじめられっ子だった。


私たちのクラスは大体、2つのグループに分けられている。
相馬をいじめる集団と、それを見ているだけの集団だ。

私は後者だった。
止めるものはいなかった。毎日毎日繰り返される嫌がらせを見ているうちに、相馬のいじめはクラスの行事のようになってしまった。

何故、彼はこんな悲惨な状況になってしまったのか。

相馬崇史は確かに変わった人だ。
クラスの誰とも口を聞かないし、いつも一人でいるみたいだった。
面倒くさがりなのか髪はボサボサに伸びていて目元が隠れていた。
朝、一番に学校にきて放課後は誰もいなくなるまで帰らない。
何を考えているのかホンとに分からない。

私にしてみればそんな奇妙さがいじめに拍車を掛けているとしか思えなかった。


ある日の放課後、私が忘れ物をとりに教室に戻ったときのことだ。
相馬がいた。教室の影に隠れるように屈んで、顔が見えなかった。
「まだいたの?早くしないと閉められるよ」
返事はなかった。思わず話し掛けてしまったが相馬の様子はおかしかった。
無口なのはいつものことなのだが、壁に寄り添って動かなかったから、少し心配になった。
私が近づくと、彼はやっと顔を上げて呟いた。
「・・・何?」
「なに、じゃなくてもう下校の時間よ。
帰らなくていいの?」
あぁ、と口にだして相馬は時計を見た。
立ち上がって埃を払うとすごすごと帰り支度をはじめた。
「じゃ、帰る」
相馬は振り返りもしないでさっさと教室を出た。 私は急いで忘れ物を取ると相馬の後を追った。
階段のところに彼はいた。相馬は歩くのが早いせいか声を掛けるまで気付かなかった。
「ねえ、待ってよ。相馬くんっていつもこんな時間まで学校にいるわけ?」
「・・・何」


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