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守りたい人がいる
【少年/少女 恋愛小説】

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守りたい人がいる-2

相馬は首だけこちらに向けた。いちいち聞き返す仕草がうっとうしかったが、我慢した。
「アンタ、いつも一人でいるよね。
友達とかいないの?」
相馬の眉がピクリと動くのを、私は見逃さなかった。彼は死んだ金魚のような目で私をうらめしそうに見た。
「寂しくない、そんなの?せっかく学校に来てるのにもったいないよ。
相馬くん、損してるよ」
ほっときゃいいのに、という思いとは裏腹に私の気持ちはどんどん進んでいった。ずっとたまっていたイライラが彼の目の前で爆発したのかもしれない。
「言いたいことがあれば言い返せばいいじゃない。 はっきり言えばいいじゃない。 そんなだからアンタ、いじめられるんだよ」
かなりキツイ言い方になってるのは分かってる。
でも、私は彼のことが心配だった。
このままいじめが続けば、きっと相馬は不登校になってしまう。
学校で彼に会えなくなると思うと胸の奥が自然と騒ついていった。
「ごめん・・・」
とだけ相馬は言った。

「なんで謝るの?相馬くんなにも悪いことしてないのに」
「うん。でも、ごめん・・・」
相馬はそうやって、何度も何度も頭を下げた。
たぶん、癖になっているのだろう。
この半年の間に、相馬は何回、こんな意味のない謝罪を繰り返していたのか。
考えるだけで無性に腹が立った。
だが、傍観者であった私はどうなのだろう。明らかに彼らと私は同罪だ。
相馬から見れば、私はいじめのグループと同じだ。
そんなふうに思われるのは、嫌だけど仕方なかった。

私はもうなにも言えないまま、謝り続ける相馬の背中を見ていた。



それからも相馬のいじめが終わることはなかった。 むしろエスカレートしていく一方で、日に日にひどくなる相馬の姿は痛々しかった。
なんとかしてあげたいのになにもできないのは、もどかしくて、情けなかった。
私には勇気がない。
今、彼に手を差し伸べてあげられるのは私しかいないのに。
彼に拒絶されるのが怖くて、皆に冷めた目で見られるのが恐くて、私はただ傍観していた。



その日、相馬はいつもより遅く学校にきた。
昇降口に彼の姿を見つけた私は、少し離れてから後について歩いた。
もう一度彼を見て私はびっくりした。
相馬のボサボサに伸びた髪が、ばっさりと切られていたのだ。
それだけではなかった。
いつも汚れていた制服は真新しいモノのように綺麗だったし、猫背気味だった背筋はしゃんとして、まるで別人だった。
だが、一番変わっていたのはその目元だった。
今まで自信なさげに隠れていた目に、力がこもっていたのだ。

相馬が教室に入ると皆が一斉に彼を振り向いた。
どよめいたクラスメイト達の中を相馬は真っすぐに自分の席に向かって歩いた。「おい、お前どうしたんだよ。イメチェンか?」
いじめグループの中の一人がからかうように言った。相馬は見向きもしなかった。
「気取りやがってよ。制服、汚いほうが似合ってるぜ。
・・・オイ、聞いてんのか?」
相馬はそのまま無視して席に着こうとした。
「何シカトしてんだよ、てめえは!」
凄みを聞かせるような声で相手が相馬の腕を掴もうとした。
「やめろよ」


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