陽子の過去-5
優子に見詰められたまま自慰行為を続けていた陽子に、絶頂の兆候が現れた。自慰行為であろうとセックスであろうと陽子は絶頂の前にイヤイヤをするように首を振る。それに併せて陽子の淫部を弄るクチュクチュとした指の動きが早くなる。
「はあん、はあん、はあん」
見守る優子の動きもそれに併せて早くなっていったが、突然陽子は達する直前に指の動きを止めてしまった。
はあはあと荒い息づかいをする陽子に、優子も自慰行為を中断して戸惑いながら声を掛けた。
「よ、陽子さん」
優子の問いかけに、陽子は瞑っていた目を開けて話の続きを始めた。
「楽しい一時だったけど電車は2人だけの世界じゃなかったのよ。イク寸前に男の動きを不審に思った人が男の手を持って『痴漢だ』って叫んだの」
話を聞きながら、そうなって欲しく無いと願っていた優子は苦しそうに顔を歪めた。
「そ、その人どうなったんですか?」
「次の駅であたしと一緒に降ろされたわ。でも、駅長室に連れて行かれる途中で、怖くなったあたしはその場を駈けだして、発車寸前の電車に飛び乗って逃げたの」
「えええ!」
「その日は1日中怖くて仕方が無かった」
その時の事を思い出したのか陽子は身震いをしだした。
「陽子さん…」
陽子は気を取り直すように、声に張りを付けて話を続けた。
「あたしには弟が居るのよね。様子がおかしいあたしに気づいた弟が、『何があった?』ってしつこく聞いてきたわ。怖くて何も言えなかった。でもね。結局、根負けして泣きながら全部話したの。あたしのせいで犯罪者を作ったことをね」
「そ、それでどうなったんですか?」
陽子は遠い目をしながら淡々と続けた。
「弟に説得されて警察に行ったの。親には言えないから付き沿いは弟だけ。警察で『目の前で痴漢で捕まった人が居たけど、怖くなって逃げました』って、『捕まった人は痴漢なんてして無いし誤解です』って泣きながら説明したわ」
「じゃ、じゃあその人は助かったんですね」
優子はホッとした表情を浮かべた。