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かくれんぼ
【その他 官能小説】

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かくれんぼ-1

 亮子の体にはときおり秘密の疼きが訪れる。周期は決まっていない。月に一度か二度の時もあれば二、三か月何もなくて不意に感じてくることもある。
 いずれにしても、意識してそうなるものではなく、いつもふっと、陽炎のように起こるのである。

 一人でいる時、股間に仄かな温もりが生まれ、じわっと湿潤してくる。
「あ……きた……」
疼きの兆候である。
 何らかの刺激によって発火するのではない。日常の家事の合間などに前触れもなく秘肉が生き物のように蠢き始める。そして脳裏に現われるのはぼんやりと黒ずんだ記憶である。

 静岡の父方の実家を最後に訪れたのは十二歳の夏のことであった。その年の暮に祖父が亡くなり、残された高齢の祖母は他県に住む伯父と同居することになって相続のために懐かしい家は処分されて現在はない。
 その夏の出来事が疼きと共に甦ってくる。十五年も前のことである。

 従兄弟の聡史と夏に会うのは初めてだった。伯父や叔母の家族と亮子の一家が勢ぞろいするのは毎年お正月だけである。後から知ったことだが、この時祖父は末期の癌で入院していて今後のことを話し合うためにみんなが集まったのだ。


 子供の世界には深刻な話は無縁である。
 聡史は伯父の長男で亮子より一つ年下、その下に六歳の弟がいた。叔母には幼稚園に通う二人の女の子がいて、五人で大騒ぎをして遊んだ。
 羽目を外して叱られるのは一番年長の亮子である。小さい子が転んで泣いても、障子に穴を開けても亮子のせいになる。だから大人たちが揃って病院に行った時はほっとした。

 かくれんぼをしようと言い出したのは誰だったか。
「いいね、やろうやろう」
大人が留守だと全部の部屋が使える。部屋は離れも含めると五つあって広いが、家の中だから隠れる場所は限られている。亮子や聡史が鬼だとすぐ見つけてしまう。
「お姉ちゃんと聡史くんが隠れるから三人で探して。見つけたら賞品に飴をあげます」
「わーい」
「みんな、玄関に行ってて。もういいよっていったら探すのよ」
小さい子は真剣になるから面白い。

 亮子が考えていたのは押入れの上段である。中はかなり奥行きがあって小さい子だと上れないから見えないだろうと思ったのだ。
 すぐに奥の部屋に走っていって上に上って襖を閉めた。客用の布団はすでに部屋に出してあるのでゆったり寝転がれた。
「もういいかい……」
声が聞こえた。

(聡史はどうしただろう……)
返事をしていいものか迷っていると、襖がすっと開いて聡史が顔を覗かせた。
「どうしたの?」
「チビたち、もういいよって言ってないのにもう探してる」
「早く上って。見つかっちゃう」
ドタドタと足音が聞こえてきた。

「いないよ」
「いないねえ」
「押し入れは?」
聡史の弟の勇次だ。襖が開かれて亮子は聡史を引き寄せて奥に身を沈めた。
「いない」
「裏にいってみようか」
「うん。いってみよう」
(行った行った……)

 真夏のことである。押入れの中は蒸し風呂のように暑い。
「暑いね……」
聡史が言って身動きした時、気がつくと彼は亮子に重なった体勢になっていた。彼女の脚は開いていて挟む格好になっている。何でそんな形になったのかわからない。
 薄暗くて聡史の表情は見えないが、顔を見合せているのは位置関係でわかる。息がかかるほど近い。二人ともじっと動かずにいた。

 小さな灯りが灯ったように下腹部に心地よさが生まれたのは間もなくのことであった。体の奥がほんわかとして来て彼女の手はいつか聡史の背中に回っていた。
 心地よさははっきりした感覚ではない。だが、とても離れがたいような妙な粘着性をもって少しずつ広がっていった。

 亮子も聡史も黙っていた。互いの息遣いが聴こえている。
 股間に硬いものが触れた。と、感じたと同時に聡史が体を動かし始めた。下半身を押しつけてくる。
(あ……)
漂うように停滞していた心地よさがさらにふわっと盛り上がって体に熱が走った。亮子の体も自然と彼の動きに呼応していた。

 セックスの知識はほとんどない。学校で生理を中心とした型どおりの授業を受けたことはあるが、まだ初潮を迎えてはいない。それでも股に当たる硬いものは『おちんちん』だと思っていた。脚を上げて押し上げると自分の『アソコ』を圧迫してくる。意味はよくわからなくても男女のその部分が『何か』を秘めているのは仄暗いイメージとして持っている。

 擦りつけ合い、亮子の脚は聡史を挟み、彼も無言で動きを速めてくる。
(気持ちいい……)
局部に快感が閃いた。体験したことのない未知の感覚であった。
(あ、あ、……)

 聡史が慌てて体を離したのは突然襖が開かれたからだった。とっさのことで頭を起こしていたので弟たちに見つかってしまった。
「あ、いた」
「みっけた」
亮子も汗びっしょりの顔を覗かせた。膨らんでいた快感がすっと萎んで、浮いたような感覚が残っていた。 

 

 

 


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