Purple memory-24
島島島島島島島島島島島
―――それから2時間後、
「済まなかったな、何の役にも立たなくて」
「・・・いえ、お忙しい中わざわざ足を運んでもらってありがとうございました。お陰で少し気分が落ち着きました・・・・」
とりとめのない話と家の中を見て回るといったことであっという間に時間が過ぎ去っていた。
既に家の前に呼んでもらっていたタクシーの前で最後の握手を交わすジェクトとワッカ。
これからジェクトは今夜宿泊するスピラホテルに向かう。
そして明日の午前の便で島を離れるのだ。
ジェクトにとっては過去の思い出に浸るために来たようなもので、
無論彼の力だけでルールーを発見できようとは思っていない。
「それじゃあ、また進展があったら・・・・」
「ええ、必ず連絡いれます。先輩も身体に気をつけて」
最後の握手を交わした後、ジェクトはドアの開いたタクシーの中に滑り込み、 そのまま座席のクッションに身を沈めた。
―――ドルン、ドルルン・・・・・
エンジンが起動し車体がゆっくりと動き始める。
「お客さん、どちらまで?」
「スピラホテルまで頼む」
運転手に行き先を告げると、
ジェクトは背後で見送っているであろうワッカの方に振り返ることもなく、
静かに目を閉じた。
瞼の裏側に在りし日のルールーの顔が黒いウエデイングドレスを身に付けた姿で鮮明に浮かび上がってくる。
(ルールー・・・・)
脳裏に浮かび上がる花嫁姿の彼女はジェクトの心に、知らず知らずのうちにさざ波を起こしていた。
その面影を消さないように、タクシーがホテルに到着するまで彼は瞑想の姿勢を崩さぬまま一切言葉を発しなかった。
―――ブロロロ・・・・・
(どこへ消えたんだ、ルールー・・・・ワッカでも俺ではない男を惹き付け、
そして拐われたのか・・・・・)
(今の俺ならば・・・・・俺がお前をさらって、決して離さないだろうに――――――)