Purple memory-10
ルールーが保有しているという大型ヨット――――
大きな船体と通常のものより太い帆柱に白い塗装が施され、
デッキには大人5〜6人が大の字でも寝ることのできる広さが確保されており、
デッキから船内に梯子で降りれば、
やや狭い空間では辛うじて2人は横になれる白いシーツの張られたベッドと、
小さいが保存食や飲料水のペットボトルが入った冷蔵庫、部屋の隅には釣りや泳ぎを楽しむための資材も一通り揃えてある。
壁と一体化したガラス張りの棚には何種類かのブランデーと専用のグラスが入ってある。
一見寝室兼居間のような空間の隣にはシャワー室らしき部屋の小さなドアがあり入り口にはそれを暗示するかのようなバスタオルが数枚かけられるように手すりがもうけられてあった。
彼女曰く船舶免許を取ってから自分の貯金を切り崩して奮発したという“贅沢”らしいが。
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―――パチッ・・・・
片手で部屋の隅にある電気のスイッチをつけた後、
ジェクトは両腕で抱えあげていたルールーの身体をゆっくりベットの上に下ろした。
―――ギシッッ・・・・
水気も含んだルールーの身体の重みでベットのスプリングが微かに軋んだ音をたてた。
「このままだと風邪をひくぞ。着替えるか?」
「貴方に、脱がせてほしい・・・・・」
覆い被さるようにして見下ろしてくるジェクトを見上げるルールー。
その瞳には既に酔いの色は消え、代わりに男を誘う女の官能的な炎が宿っていた。
当然ながら“経験豊富”なジェクトはそれに気づいた。
いや、正確に言うとルールーがヨットハーバーに自らを“誘導”した時から、 そんな空気は薄々察してはいたのだが。
そして、そんな彼女の一言が何を意味するかも当然理解していた。